Valeri BeimのHow to calculate chess tactics読了。読了といっても途中から例をかなりはしょった。 総論的な感想としては自分よりもっと上級者の人を対象に書かれた本だと感じた。何より例が非常に難しいものが多い。
この本を読む人の多くが、読みについての手法やタクティクスについての思考過程を学びたいと考えているだろう。ということで、読んだことの整理を兼ねてほぼ要約の感想を書く。
"Tactics"の章と"Calculation"の二章からなっている。
1.一章 Tactics
Tacticsの章は、最初にTacticsとはなんぞやという定義論が長々と述べられる。TacticsとCombinationの違い、Combinationにおいてサクリファイスは不可欠の要素か、等々、「へー」となることが書いてある。しかし、果たして実戦上に役立つ知識かどうかはわからない。むしろ本題は後半の「Logical Analysis」の部分。
タクティクスにおいて難しいのはタクティクスの存在に気付くことだ。では、どのようにして見つけるべきかということに対するBeimの回答がこれだ。 Logical Analysisとは要するに、具体的な手を検討する前に、ポジションを構成している要素を精緻に分析するという手法だ。
具体的には、①駒数の確認②彼我のポーンストラクチャーにおける弱点の確認③最後に動的な要素(展開の具合、イニシアチブの有無等)の確認という手順を辿るべきだとする。
その上で、タクティクス(特に駒得を伴うタクティクス、メイト)が発生するためには戦略的な優位があることが前提条件にあるということを強調する。例えば、ビショップ1つがキングサイドに向いていてもタクティクスが成功する可能性は低い、しかし、クイーンとビショップ2つがキングサイドに向いていたらタクティクスが発生する可能性は高いだろう。 このように、タクティクスが発生するのは前提条件が整っている必要がある。
・・・なんてことが書いてあるが、これって既に何百回も言われていることである。特に、目新しいことではない。
Beimの言うLogical Analysisの重要性はわかる。闇雲に手を検討する前にポジションを精緻に分析すべきことの重要性は最近少しずつわかってきた気がする。しかし、上記①②③では、あまりに抽象的かつ一般的のように思われる。 もちろん、実戦ではタクティクスがあるかどうかわからない状況であるために、上記①②③のような思考過程の方がより実戦的であろうとは思う。しかし、タクティクスの本について書いてある以上、タクティクスの発生条件に特化した分析手法についてもっと掘り下げて書くべきだ。この点は不十分に感じた。
この点については、Tune Your Chess AntennaやUnderstanding Chess Tacticsの方がはるかに優れている。 両者ともBeimのいうLogical Analysisについて述べた本だということができる。いずれの本も、タクティクスの発生条件は何かというテーマで書かれた本だが、もっと具体的に書かれている。
2.二章 Calculation
Calculationは日本語だったら「読み」なのかな。とにかく、二章は読みについての章。
Alexander Kotovが"Think Like a Grandmaster"において提唱した読みについての手順を軸として書かれた章。このKotovの本は読み関連の本だと必ずと言っても登場する。 BeimはKotovの手順は不十分だと主張する。
そもそもKotovが主張した手順というのは以下のようなものだ。
1.読みを始める前に、ありうる全ての手をリストアップしなけれなばならない(候補手 candidate moves)。これによって見過ごしが防げる。
2. 1を終えたら読みを始める。どの手から検討し始めるかについては、プレイヤーの性格やポジションの性質に拠る。最も難しいラインから検討する人もいるかもしれないし、逆の人もいるだろう。
3.上記によって検討されたラインは樹形図のように示される。
4.読みをなすにあたって重要なルールとして、一度検討したラインを再度検討してはならない。
というもの。 そして第二章では、この手順では不十分だとして以下のように問題を指摘して修正する。
第一点については、Kotovは候補手をどのように探すべきか述べていないと批判。そこで、第一点は、「候補手とは、当該ポジションにおいて論理的に見える手やもっともらしく見える手を意味する」と修正すべきとする。とはいえ、「もっともらしい」という点について、経験や直感によるところが大きいとも別の箇所で述べている・・・
第二点については、候補手の1つが複雑過ぎる場合、そのラインはひとまず置いておいて別の簡単なラインから検討すべき。簡単なラインが成立しないときに限り、難しいラインを検討すべきとする。
第三点については、そもそもラインを樹形図のように考えることに実益があるのか不明であるとして、検討したラインを頭の中で樹形図のように整理することは無意味であるとする。
第四点については、各ラインについては原則として一回限りの検討を行うべき、しかし、これはあくまでも手を比較検討している段階で、実際に手を打つ前には読みに漏れがないか最終チェックすべき。また、次に述べるresulting movesの考えを利用する場合には、再度同じラインを検討することはやむを得ないとする。
第四点に関連して、”resulting move“という概念を紹介している。(なお、この点についてあたかもBeimが考えたかのように書かれているが、Improve your chess now!でTisdallが既にこの考えを紹介していたような気がする…)。resulting movesというのは、ある候補手Aを検討してその手が成立しないことを確認した場合、成立しない理由からアイデアを得て別の候補手Bで利用するというもの。
わかりにくいだろうから、例を以下に示す。(Tune your Chess Antennaからの引用例)
また、読む際に一気に最後まで読むのではなく、段階ごとにポジションの評価を加える方法、読み終わった最終局面のポジションの局面評価の重要性、いつ読みをやめるべきか等々の興味深いテーマが扱ってある。特に読みと局面評価は密接不可分であり、いくら長いラインが読めても最終的な局面の評価を加えることができなかったら意味がないということはなるほどと思った。
3.終わりに
タクティクスの章については目新しいところがなかったのは事実だがタクティクスを検討する前の局面評価の重要性の点については意識づけられた。読みについての章は、読みについての1つの手順が示されているという点では参考になった。確かに、Kotovの手順は理想的で実戦的ではない。ただ、Beimの修正も特段変わったものというものでもなく常識的なものではあるが。
結論としては、この本を読むよりも、Improve your chess now! やTune your chess Antenna、Understanding Chess Tacticsを読む方が実益はあると思う。
ということで面倒な読書も終わったので、今度はタクティクスについて考えるところ、何をしたらタクティクスが上達するか等の点について自分なりの考えを書いてみたいと思う。
2013年7月26日金曜日
2013年7月11日木曜日
タクティクス・・・
中盤まで押していたが、タクティクスに気付かなかった。そして、31手目で霊長類レベルのブランダーをしてそのまま他界した。
19手目と21手目でタクティクスの見逃し。19手目はまだしも、21手目は難しくないタクティクスだったので気付くべきだった。
まだまだ微妙なポジショナルプレイやギスギスしたエンドゲームで勝負がつくレベルではなく、しょぼいタクティクスやまぬけなブランダーで勝負がつくレベルにいる。そう考えると、タクティクスを強化しないといけない。何より、今のままでは今より上のレベルにはいけないだろう。
chess.comのTactics Trainerは、大体1750~1850ぐらいでうろついている。最高が1978。対局相手のプロフィールを見ていると、同じぐらいのレーティングの人は大体2000ぐらいある。人によっては2300とか2400という人もいる。
なので、これからタクティクス力を上げていきたいと思う。 とりあえずの目標はChess.comのTactics Trainerで2000を超すこと。次は2200。 できれば、年内に2200を越したい。 これからいろいろ試していきたいと思っているので、その度に途中経過を報告したいと思う。
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