2014年2月17日月曜日

ゼロからはじめるチェス1 初級・中級編

 前回の記事で紹介したPump up your Ratingの中で、Talent is Overrated(直訳すれば「才能は過大評価されている」)という本が紹介されていた。興味があってKindleで買って飛ばし読みしたが、結構面白かった。それも踏まえて、ゼロからチェスを始めた場合、合理的で効率的な上達法とは何なのかを考えてみたい。

 上達法関連の本はやたらと多いが、重要な部分は共通する。 それらをまとめる意味も含めている。 ただし、単なるアマチュアの一意見なので、信ぴょう性は保証できない。ただ、上達関連の本等は無駄にたくさん読んではいるので、そういった知識の総体という意味では、間違ったことは書いていないはず(多分)。 むしろ、以下で書いていることは、今まで読んだ本・記事等で知ったことをまとめたものに近い。

 また、以前に「チェスが上手くなるには・・・」というシリーズも書いたが、いくつかの点で変更点がある点と、実力の段階に応じてまとめたという点で多少趣が異なる。 「チェスが上手くなるには・・・」のシリーズでは、個別のテーマで詳しく述べてあるので、このうさんくさいヘボブログのブログ主の言うことをちょっとは聞いてやろうかと思ったなら、そちらも参考にすれば 、ちょっとはためになるかもしれない(多分)。まあ、話半分、眉唾もので読んでもらいたい。

 さらに、できるだけ合理的な方法論を考えるというコンセプトなので、「もはや勉強」という感じもする方法になった。 ただし、従ったら確実に無駄は省ける(多分)。  そこまでチェスに必死になるのかという問題はあるが、限られた時間を合理的に使いたい、できるかぎり無駄を省きたい、とりあえず早くうまくなりたい人もいるはずなので一つの試論として書いてみる。 あくまでも理想論としての学習方法なので、もちろん私自身が下記の通りできているというわけではない(できていたらもっと上手い)。

  なお、以下で述べる「レーティング」はChess.comのStandard基準。チェスの強さというのは限られた時間の中で、どれだけの強さを発揮できるかというものだと思うので、通信チェスのレーティングは別のものとして考えている。

 テーマは「時間をできるだけかけず、早く上達する方法」。 ハイパーロング記事なので注意。

目次
書き終わって気づけば長くなりすぎたので、目次を作成・・・

第一 初級編(レーティング~1200)
 1.事始め
 2.はじめてみる
 3.チェックメイトの基本的な形をおさえる
 4.1手のタクティクス
 5.初級編まとめ
第二 初級~中級編(レーティング1200~1700)
 1.タクティクス再び
 2.オープニング
 3.ストラテジー
 4.エンドゲーム
 5.ゲームの見直し
 6.思考過程
 7.まとめ
最後に これをやると無駄なことリスト



第一 初級編(レーティング~1200)

1.事始め
まずは、ルールを覚える。特にアンパッサンなどは忘れやすいので注意。この点については、「チェス入門」がわかりやすい。

2.はじめてみる
 まずはゲームに慣れること。ルールを覚えたら試合数をこなす。 最終目的はチェックメイト、中間目的は駒得なので、とりあえずは駒をとることが目的にする。 ゲームをすることやはり一番上達につながるので、本など読まずゲームをする。

プレイする場所は、chess.comがベスト。ICCはうまくなってからで良いと思う。各チェスサイトの特徴は以下のような感じ。

chess.com : 現在もっとも勢いのあるサイト。プレイヤーが多く、タクティクス問題、みんなのブログ記事、マスター達の記事、議論ができるForum、等々、相互交流も図れる。 また、プレミアムメンバーになるとビデオ閲覧、タクティクス問題がたくさんできる、等々の特典あり。 ただし、どうしてもビデオが見たい、どうしてもChess Mentorやりてえ、なんてことがない限り、★会員で十分。
 欠点としては、チーター率が結構高い、ある程度上のレベルになるとプレイヤーが少なくなる、といったもの。  ただ、これから変わっていきそうな気もする。

ICC:昔からあるところ。 特徴はマスターが多くプレイしているため上位層が充実していること。また、ウェブサイトではなくソフトで動作するところなので、噂によるとチェス・エンジンを起動しているとチーターとして検挙されるらしく、チーターは少ないらしい(以前どこかの記事、あるいは以前のブログでこの点については扱った)。 ただ、有料会員登録しない限りプレイできないので若干排他的。そのうち、chess.comに負けそうな予感。

Chesscube: 変なポイントシステムが導入されていて面倒くさい変なサイト。ビデオ閲覧機能等も実はあったりするが、全てにおいて半端。レーティングの初期設定が高いこと、初期補正がないため、レーティングが全体的に高く、高レーティングを得てホクホクできることが利点か(今はどうなってるかしらんけど)。

Lichess: シンプルイズベストな場所。機能はあまりないが、登録も簡単、サイトも見やすい、プレイヤーもそこそこいる。 なので、プレイするには良い場所。

チェス入門の対局場:日本語なのでわかりやすい。いつもある程度は人がいる。場合によっては上手な人に教えてもらうことができる等の利点がある。 ただし、チーターがそこそこいる、プレイヤーの絶対数が少ない、といった欠点がある。 ただ、このサイトの最大の長所は対局場というよりも、初級者用の基本講座。 手とり足とり教えてくれるので、まずはここから。


3.チェックメイトの基本的な形をおさえる
 しばらくやってみたら気づくのは、チェックメイトが結構難しいこと。 特に、ルーク+キングのチェックメイトでもやり方を知らなかったら、延々とキングを追いかけまわしてドローなんてことになりかねない。 なので、基本的なチェックメイトの形を覚える。

 本としては、「Checkmate for Children」が簡潔かつわかりやすくベスト。 邦書なら「チェックメイトの技法」がある。ただし、結構分厚い。 チェックメイトのために長い本なんて読んでられねえ、という場合には、Pandolfini's Endgame Courseの最初の数十問を解くだけで十分。 あるいは、Wikipediaの「Checkmate」のページだけでもおそらく十分。

4.一手のタクティクス
 駒取りを目指すといっても、相手もそう簡単にとらせてくれない。そこで、タクティクスの出番。 いわゆるフォーク、ピン、スキュアー、といったもの。 基本的な点については、やはり「チェス入門」でわかりやすく紹介されている。

 タクティクスは基本形を完全に理解するのが最も重要。 もっとも、市販の本は難しいものが多い。 そこで、まずは、一手のタクティクスを理解する。

 http://www.entertainmentjourney.com/index1.htm

 一手問題に関しては、この「How to get to 1900」というサイトに無料で問題が掲載されている(ページ中頃にある「White/Black to move and win in 1 move」)。 これを印刷する。 非常に簡単なので、15分もあれば30問ぐらい解けるはず。 3周ぐらいして、完璧にするのが理想。 具体的な方法論については、下記の中級編のタクティクスの項を参照。

 ちなみに上記サイトでは、2手問題、3手問題もある。 チェスに金なんてかけられてらんねえ!という人は、下記の中級編におけるタクティクスの代替の問題集としても2手・3手問題を使える。

(追記)書くのを忘れていたが、「どうしたらチェスできみのパパに勝てるか」と「チェス 魔法の戦術」は両方共基本的なパターンを押さえ、かつ、問題数も少ないので非常にオススメ。

5.初級編まとめ
 多分、上記のことが初級(レーティング1200ぐらいまで)を抜け出す最短ルートの一つではないかと思う。 まとめれば、①ゲームを継続して行う、②タクティクスの一手問題が確実に解ける、③チェックメイトができる。 総時間として大したことはないはず。

第二 初級~中級(レーティング 1200~1700)
 ちなみに、中級編が1700区切りなのは、私自身のchess.comのStandardのMAXが1720ぐらいだったので、それ以上のことはわからないため。とりあえずの区切りとして1700とした。 実際は、1800ぐらいまでが中級編の範疇になると思う。

1.タクティクス再び
(1)タクティクスの重要性
 なんだかんだ言って、レーティングが2000ぐらいまではタクティクスタクティクスタクティクスだと思うので、タクティクスは続ける。この段階では一冊を完璧にするのが目標。 具体的には、やる気満々なら1001問が収録されている、「1001 Chess Exercises for Beginners」がベスト。 そんな大量にやるのめんどいという場合は、500問程度の「Chess Tactics for Champions」または600問程度の「Learn Chess Tactics」が良書。

(追記)Dan HeismanのBack to Basics : TacticsもGOOD。 特に初級者~中級者に向けて書かれており、メイトのパターンが掲載されていること、各タクティクスのモチーフについて解説が丁寧にされていること、また初級者がミスしがちなCounting(駒を取って取られて・・・という駒交換の計算のミス)という概念(Dan Heismanが考案らしい)について詳しく説明されていること、という点が特に優れている。 問題数は600問程度(たしか)だったと思うので量としてもちょうど良い。

 例えば、chess.com、Chess Tempo、Chess Tactics Server等でネット上のタクティクス問題もあるが、繰り返しがしやすいという点において本の学習に軍配が上がる(ただし、Chess Tempoの有料版は除く)。

(2)具体的なやり方
 いずれの本を選ぶにせよ、完璧に「潰す」ことが最重要。 時間を省く、タクティクスを覚えこませるという目的からすれば、一定程度の数の問題を完全に理解していることが重要。 実際、一日10問ぐらいでも2、3ヶ月で終わる。

 合理性・効率性を追求するならば、次のような手順でやるべき。

①実際にゲームで出会った局面であるかのように、最後まで「読み切る」。わからなくとも、手は選んで読む。
②解答を確認し、わからなかったらなぜ気づかなったか理解するよう努める。
③解いた問題に日付を記入。1日後、1週間後、3週間後、1ヶ月後、等決められた周期で復習する。 復習の際には高速で、しかし、読み切る作業は怠らない。

 集中して解くこと+繰り返しが肝。 もはや勉強みたいになってしまうが、一冊終わった後に繰り返すことから比べれば遥かに頭に残るし、時間も大幅に削減できる。勉強法等では一般的な方法だが、「Talent is overrated」でもやっぱり重要だと書かれていた。

 どの分野でも上達しないことを時間がないということを言い訳にする人は多いが(まあ、それは私のことなんですが) 、上達の差を分けるのは時間ではなく、どれだけ「意識的な練習」を「繰り返した」かによる。 この方法に従えば、確実にタクティクスは向上すると思う。 そして、かける時間は一日15分ぐらいでも十分だと思う。
  
2.オープニング
(1)オープニングはほどほどに

 私自身もオープニングをいろいろ調べたが、この段階ではあまり意味がないというのが私自身の結論であり、チェス学習の通説的な考え方。 要するにオープニングについてあれこれ調べたことは、上達に資しないという意味では、途方も無い時間の無駄だった。

 とはいえ、全く知らないというのもアレなので、オープニングの種類にもよるがメインラインの10手手ぐらいまでは知っておいた方が良い。また、オープニングを学習する際には分岐点(Tabiya)を意識する。 20手ぐらいまで「一般的に」覚えるのは完全なる時間の無駄と思った方が良い(ゲームの検討の過程でヴァリエーションを検討することはあると思うが)。

 また、オープニングの選択については、一つのラインをひたすら極め続けるか、複数のラインを覚えていくかという問題がある。 しかし、よほど時間がある場合でない限り、オープニングを突き詰めるなんてことは無理なので、 この段階では特に気にせず気に入ったオープニングを選べば良い。

 さらに、できるかぎりシンプルなオープニングが良い。 仮にもっとうまくなって上級者になればその段階ではオープニングの知識も増えてくるだろうし、自分のスタイルもできてくるはずで、その段階でこそオープニング選択は真剣に考えれば良いし、その段階でこそまじめにオープニングを構築すべき(多分)。 なので、あまりオープニングをどれにするかという点について考えまくるのはよくない。 そもそもオープニングの優劣の「せい」で負けるなんてことはないはずなので、なおさら。
 
(2)負担の少なそうなオープニングの例
 シンプルなオープニングと言われても・・・と思われると考えられるので、例を挙げてみたい。

  例えば、

白1.e4なら・・・
・オープンゲーム(1...e5)に対してはイタリアン(Bc4)、
・フレンチ(1...e6)に対してはエクスチェンジ・ヴァリエーション
・カロカン(1...c6)に対してもエクスチェンジ・ヴァリエーション
・シシリアン(1...c5 + d6)に対してはBb5の系統のロッソリモまたはモスクワヴァリエーション
・シシリアン(1...c5 + e6)に対しては、キングズ・インディアン・アタック
・モダン・ピルツ( 1...d6/g6)に対しては150 Attack

黒なら・・・
1.e4,d4,c4全てに対して1...e6(フレンチ、クイーンズ・ギャンビット・ディクラインドになる。QGDのメインラインはTartakower Variation)

 等々が比較的負担が少ないオープニングといえるかもしれない。ただし、覚える量が少ないからといってプレイするのが簡単というわけではないが(例えば、KIA、ロッソリモ等)。

(3)調べもの、オープニング維持のために
 具体的なオープニングについては、Fundamental Chess Openings(FCO)で調べるのがベスト。辞典のような本だが、オープニングのアイデア等々についても説明されていてわかりやすい。また簡潔。この段階ではこれ以上の知識は不要。不要!

 また、オープニングについては、Chessbase社のChessbaseというソフトがあればベスト。 これがあれば、オープニングをデータベースとして保存されるし、気になるところは内蔵のオープニングツリーで続きのヴァリエーションが保存できる。 ゲームを終えた後に、新たに気づいたラインを追加することもできるし、ヴァリエーションの中にコメントを入れることもできる。 ただ、Chessbaseは使い方がわかっていないと、慣れるまで使いにくいソフトなので慣れるには時間がかかるかもしれない。

 なお、オープニングソフト関連は、なんたらWizard、なんとかposition trainer、等々いろんなソフトを試してみたが、Chessbaseがどう考えてもベストなので、オープニングソフトとしては他のソフトを検討する必要はない(人柱)。なので、何も考えずにChessbaseを使用するのがベスト。

(4)まとめ
 仮に、ChessbaseとFCOがあるならば、オープニングの学習は次のような感じになる。 ①ゲームをする、②ゲームの見直しをする過程でヴァリエーションをチェック、③気になるならFCOで当該ヴァリエーションを検討、④データベースに保存。

 ということで、オープニングを個別に学習する時間はとる必要はないというのが結論。

3.ストラテジー
 ストラテジーとは直訳すれば「戦略」で、チェス上のより具体的意味では、アウトポスト、オープンファイル、各駒の特性、等々の戦略上重要な概念を利用して、有利にチェスの試合を進めていくための知識のこと。

 まずは、アウトポスト、オープンファイル、ウィーク・スクウェア、バックワード・ポーン等々の概念を理解することが出発点。 中身が詰まった本ではないが、PandolfiniのWeapons of Chessで概念の説明がわかりやすくされている。 スッカスカの本なのですぐに読める。

 一般的に、ストラテジーの学習のためにはマスターのゲームを学習することが良いとされている。 具体的には、http://home.comcast.net/~danheisman/Events_Books/General_Book_Guide.htm、ここのページの最下部にある「Recommended Instructive Game Anthologies」 というところにあるような本が一般的には定評がある本。

 ただ、この段階においては、ストラテジーもゲームの結果を左右する最重要の要素というわけでもないので、時間をかけるべきではない。やるとしても一冊ぐらいを丁寧に「完璧に」つぶすことが必要十分。  具体的には、「50 Essential Chess Lessons」が超簡潔なので良い。 とりあえず、一冊を丁寧に潰すこと。 それ以上の知識を持っているプレイヤーはこの段階ではこのレベルでは99%いないし(半端な知識をもったプレイヤーは私みたいなのがウジャウジャといるが)、それ以上の知識も不要。

 もっとも、時間が有り余って仕方ないぜ!という人は、どんどん進んで行った方が良いと思う。できるだけ多くのゲームに触れた方がパターン認識の観点からは理想的なので、一日一ゲームなんていうのも良いかもしれない。 そうはいっても、学んだことは必ず復習して、学んだゲームのコンセプト、何がポイントか、何を学べたか、等々はちゃんと頭に残る形にしておかなければならない。 一回やったぐらいでは、よほど真剣に考えたのでもない限り無駄。無駄! 仮に一日一ゲームを見る時間が確保でき、合理的グルグル復習サイクルを取り入れることができたら、一年間でかなり成長しそうな気はする。

 具体的な学習手順としてはタクティクスの項で述べた方法が理想的。

4.エンドゲーム
 エンドゲームはポーンエンディングの基本的な形を理解していることがまずは最重要。何より登場確率がもっとも高いため。 といっても類型は非常に少ないため一瞬で終わる。基本の基本は2時間あれば終わる。 また、ルークエンディングをいくつかやる程度。それだけ。 無駄に難しい割に出現機会のないエンドゲームはやるだけ無駄。そもそも、そんなエンドゲームは100回のうち1回ぐらいしか現れるかどうか。

 具体的な本としては、Silman's Endgame Courseを自分の能力に合わせてやるのが良い。レーティング別に本が分かれているのが良い。 アメリカで有名なチェスコーチでもあるジェレミー・シルマンが、この程度の実力ならこの程度のエンドゲームの知識で十分とセレクトしたものが掲載されているので、あまり考えずに従っておいて良い。

 多分、Bクラスぐらいまでやれば超十分といえるほど。 説明がやたら詳しいのもGOOD。 各レベルごとに進んでいくのであれば、大した量ではないのですぐに終わる。 「これで足りないんじゃないか・・・」と思ってしまいそうになるかもしれないが、それは「足りない症候群」という危険な徴候なので注意。何も考えずに、マシーンのようにシルマンにヘーコラ盲従しておくのが吉。

 ちなみに、初学者向けとしてPandolfiniの本も有名だが、①説明が場合によっては適当すぎること、②必ずしも重要度に応じて進むわけではないこと、③誤記が多すぎること(ネット上で一応は正誤表が存在するが)、等の理由のためオススメできない。特に①②がダメ。ただし、最初のチェックメイトの項はまとまっていてわかりやすいかも。シルマン本がある以上、あえて使う必要性のない本。

 あれこれ手を伸ばさず、シルマン本一冊を自分の実力に応じてやるというのがベストというのが結論。また、理想的には、上記タクティクスで述べた学習手順に従うのがベスト。

5.ゲームの見直し
 以上、タクティクス、オープニング、エンドゲームについて述べたが、一番伸びを早くするのは自分のゲームの見直しだと思う。 具体的な手順については「チェスが上手くなるには・・・」の中のゲームの見直しの記事を参考にしてほしい。

 さらに付け加えるとしたら、今回読んだPump up Your Ratingに書かれているように、ミスを類型化して記録していくという方法はかなり効果的(推測)。 また、同書によれば、できる限り最初はソフトの手を借りずに自分で分析をし、最後にソフトでチェックするのが良いとしている。

 なお、ミスの類型化というのは、例えば以下のようなもの。このように類型化しておけば、自分がどこでミスをしがちなのかを理解できるし、次からそのミスをしないように気づくことができる。 ミスをなくせば、それだけ上達できる。逆に言えば、自分の典型的ミスを除去することができなければ、どれだけ本を読もうが絶対にあるラインから上へと上達することはできない(ほぼ通説)。


タクティクス
ナイト・フォークに気付かなかった 2
クイーン・キングのスキュアーに気付かなかった 1

ストラテジー
相手のポーン・プロモーションに気づけなかった 3
オープンファイルを有効活用できなかった 4
アウトポストの不活用 2

エンドゲーム
ポーン・エンディングの基本形で失敗 2


6.思考過程
 思考過程については、「チェスが上手くなるには・・・」シリーズの第一回・第二回目で述べたので参考にしてほしい。 ただ、大幅な変更点がある。 それは、思考過程の枠組みをプログラム化して、毎回手を検討する際に意識をするのはおそらく無駄な試みなので、やめておいた方が良いということ。

 例えば、第二回の記事で以下のようなDan Heismanが書いていた思考過程を紹介した。

①相手の脅威の確認。特に、強制手順(forcing moves)の検討。
②相手のとりうるプランの確認。 自分のプランの確認。
③ 無条件にforcing movesは最初に全て検討。
④③でタクティクス等がなければ、自分のプランを達成させる手を「全て」チェック。なければ、相手のプランを阻害する手を全てチェック。(Initial Candidate Moves)
⑤④における手を、安全か(blunderに至らないか)どうかという観点から、剪定する。
⑥⑤において残った手の中から、最終ポジションの比較によって最も優れているものを選ぶ。(Final Candidate Moves)


 こんな思考過程をいちいち実践するのは不可能であるし、現実的ではない。また、そんな都合よく頭はできていない。 なので、こんなリストは作らなくていいし実践する必要もない

 では、どうすれば良いか、これもPump up your ratingに書かれていた方法を参考にした方法だが、一つの思考過程のテーマをしばらくの間のゲームのテーマとすることによる。

 例えば、「いつも浮き駒でタダ取りされてしまう」という問題点があるとする。 そうであれば、しばらくの間は「自分の駒で浮き駒がないかをチェックする」を思考過程の至上命題として、ひたすらそれをゲームで実践し続ける。 これをしばらく続ける、そうすると繰り返し意識することにより、それが無意識で実践できるようになる(らしい)。

 なので、 無理に思考過程のプログラムなど作らず、一つ一つ実践して、無意識にぶち込んでいくのがベストと思う。

 ちなみに、身につけておくべき思考過程におけるチェックポイントとして、一般的に言われているものとしては以下のようなものがある。

①手を打つ前に、ブランダーではないかチェック。
②浮き駒が存在しないか確認
③一手のタクティクスの確認
④相手の脅威の確認 チェック・キャプチャー・スレット(タクティクス等の脅威)
⑤③と関連するが、自分の手番であっても、 「相手の手番だったら何をするか」を確認する。
⑥駒の位置関係の把握(直線関係、駒同士の守りの関係等)
⑦複数の候補手を検討する(candidate moves)
etc...

7.中級編まとめ
 以上まとめるならば、①タクティクスを継続、②オープニングは見直しの際にチェックする程度、③ストラテジーもやりすぎない、一冊で十分④エンドゲームはシルマン本だけ、⑤ゲームの見直しはする、⑥思考過程はテーマを決めて実践する。

 例えば一日にチェスに当てられる時間が1時間とした場合、タクティクスに15分、ゲームに45分(検討含む)。 週末にストラテジーとエンドゲーム学習をちびちびやる程度で十分。 例えば、ストラテジー本として「50 Essential Chess Lessons」を選ぶなら、週に2ゲームやれば、25週間で終わる。シルマン本にしても、E、Dランクはすぐに終わる内容だし、Cランク、Bランクもそれぞれ個別のレベルとしては大した量ではない。 

あるいは、プラス30分確保、つまり一日90分確保できるなら、一日交互でストラテジーとエンドゲームを学習するのが良いかもしれない。 例えば、20分は当日分の新しい勉強、残り10分は復習とする(例えば前日の復習に5分、一週間前の復習に5分)。20分でも集中すれば結構進めることはできるし、シルマン本でエンドゲームをやるだけだったら、エンドゲームはすぐに終わる。なので、ゲーム集の学習に時間を割ける。
 ということで、大して本も買うことなく、時間もかける必要はない(ただ、Chessbaseはあれば望ましい)。 ポイントは意識的学習を繰り返すこと、これが最も最も最も重要。結局これができないから上達しない。また、本は一冊を完璧にすることを目標にすべき。手は伸ばしちゃダメ。

 ゆっくりやったとしても半年ぐらいあれば、タクティクス本一冊、ゲーム本一冊、シルマンのエンドゲーム本Bクラスまで、ぐらいは終わるはず。 そして、それぐらいが学習すべき内容としては十分ではないかと思う。これだけ意識的かつ合理的に学習したならば上達しない理由がないように思える。誰か実験台になってやってください。


最後に:これをやると時間の無駄になることリスト

 私自身の経験上+また一般的に言われている無駄なことリストを挙げてみたい。 いろいろ調べていく過程で、同じように時間を無駄にしてしまう人もいるはずなので、参考にしてもらいたい。 私自身は、途方もない時間を無駄にした。 実際、上記の方法論にしても、他の人が時間を無駄にするのを防ぐ役割もある(大げさ)。

・オープニングやりすぎ
・ストラテジーにこだわりすぎ
・ネット上のタクティクス問題をだらだらやりすぎ
・タクティクス軽視しすぎ
・マスターのゲーム本等をやたら買いまくってちょい読み多すぎ
・本買いすぎ、買っても適当に読みすぎ
・Blitz,Bulletやりすぎ
・調べものしすぎ
・上達論とかこだわりすぎ
・情報量多すぎ
・やること絞れなさすぎて、結局一つも「完璧」にできていない
・手を広げすぎ
・検討もせずに無意味な対戦こなしすぎ
・復習しなさすぎ
・思考過程にこだわりすぎ、思考の合理化には限界がある
・そもそもチェスに時間かけすぎ 

上記のリストはやったとしても100%時間の無駄といえるので、そんな無駄なことはしないようにしましょう。




続く・・・(次回からは自分が到達していないレベルなので妄想記事になります)

2 件のコメント:

  1. 初級者段階ではオープニングの勉強は特にいらないでしょうか?

    返信削除
  2. 記事の通りに始めて一ヶ月ほど勉強していたら800から1500になりました。
    ありがとうございます。ちなみに将棋有段者です。

    返信削除