2013年8月2日金曜日

タクティクスについて考える その1

 今回からタクティクスについて書いてみたい。理由としては単純で、タクティクスが伸び悩んでいるため、どのようにすればタクティクスの能力が向上するかについての考えの整理をする良い機会となると思ったからだ。

 現在のchess.comのTactics Trainerのレーティングは1850程度。最近も気が向いたらやっているが、調子が良いときはレーティングが1950あたりまでは行けどもそれ以上はいかない。結果的に1800-1950程度でふらふらしている。 また、このまま漫然とやり続けてもこれ以上上がる気配がない。 そこで、そもそもタクティクスの実力を構成する能力は何であるのかという点について明らかにした上で、どうすれば向上するのかという点について考えてみたい。

 思うに、タクティクスの難しさは二種類ある。 第一が、そもそもタクティクスの存在に気付くことの難しさ。第二が、読みの難しさ。 タクティクスの存在に気づかなければいくら深い読みを正確にできても意味が無い。 また、仮にタクティクスの存在に気づきかけたとしてもある程度の読みを正確にすることができなければタクティクスを実行することはできない。

 このようにタクティクスについて考えるとき、大雑把に2つの要素に分けて考えることができる。 両者は明確に分断できるものではないが(詳しくは次回で扱う)、便宜上分けて考える。 そこで、まずは第一の点について述べていきたい。

1.タクティクスに気付くためには

(1)Logical Analysis
 個人的な実感として、読みの要素よりもこの第一の要素の方がより重要と考える。タクティクスの問題を間違えたとき、実戦でタクティクスを成功させることができなかったとき、たいていが読み切れなかったというよりも存在に気づかなかったから間違える。

 なぜ気づかないのかという原因を省みると、多くの場合「この要素に気づいていればタクティクスを発見できたのに」という、要素の見落としにある。 そうすると、ポジションの要素を見落とすことがなければ、タクティクスにより気づきやすくなるのではないか、と考えることができる。 そこで以下では、どのようにすればポジションの要素の見落としを防ぐことができるのかという観点から考えてみたい。

 以前の記事でValeri BeimのHow to Calculate Chess Tacticsの感想を述べたが、その中でBeimはLogical Analysis(論理的分析)という方法を採っていると紹介した。要するに、具体的な読みに入る前に盤上の状態を分析するという方法だ。ただ、前述の記事において述べたように、How to Calculate Chess Tacticsの中には、具体的な分析手法については述べていない。 この点については、Tune Your Chess Antenna及びUnderstanding Chess Tacticsを参考にした上で、具体的に「論理的分析」というときに何を見るべきなのかという点について述べてみたい。

(2)具体的手順
 だいぶ以前の記事で述べたように、Tune Your Chess Tactics Antennaの中で、①キングのポジション②浮き駒の把握③駒の直線関係④ナイトフォークの可能性の検討⑤トラップの可能性のある駒の確認⑥駒の守りの確認⑦キング周りの守り駒が少ないこと、という7つの要素を挙げている。

 もちろん、実際にこのように検討しても良いのだとは思うが、①②⑦についてはいずれもウィークポイントを起点としてタクティクスの検討という意味で1つにまとめても良いように思われる。

 そこで、①ウィークポイントの確認②ナイト・フォークの可能性の検討③直線関係の把握④駒の守りの関係性の把握⑤不自然な駒の配置の確認(トラップの可能性のある駒)、とする。

 では、具体的にどのように手順で検討していけば良いか。 この点については、Understanding Chess TacticsのStatus Examination(駒の状態検査)の項が参考になった。 Status Examinationとは、それぞれの駒がまずどのような状態にあるのかを確認する手法のことだ。 

 具体的には、その駒は守られているか/別の駒を守っていないか/ピンされていないか/他の駒と直線上に並んでいないか、等々を検討する。 一概にこれを検討すべきという要素はない。ただ、その際、先述のTune Your Chess Antennaの要素が参考になると思われる。

(3)まとめ
 以上を要約すると、まず盤面を見た上でいきなり本格的な読みに入らないことが重要。

 次に、上では述べてはいないが、ポジションの概観をざっと見ることも重要である。簡単なタクティクスではポジションを精査しなくとも、直感的な把握でタクティクスに気付くことは非常に多いからだ。また、最初の概観によって目星をつけることができる。この段階でも本格的な読みは行わず、要素の検討のための簡単なラインのチェックに留める(この点については次回以降の記事で扱いたい)

 そして、ざっと見ただけで気づかなかった場合に、ポジションを丁寧に検討する。 具体的には、盤上の駒の状態をそれぞれ確認していく。 そして、駒の状態を確認する過程で、上記で挙げた①~⑤の要素を重点的に検討する。

 このように述べると長すぎて実戦的ではないように思われるが、実際に使ってみたらそれほどではない。そして推測だが、こういう作業というのは慣れたら瞬時にできるのではないかと思う。

(4)実例
 長々と書いたが、以上述べたことが具体的にどのように現れるのかを例で示してみたい。

まずは簡単な例から

Black to move

 まず、ざっくりとポジションを見た印象として、ルークがgファイルにあり、その直線上に白ナイトがあることに気付く。 また、黒駒はキングサイドに密集しており、キング周り、特にg3のナイトが怪しいと検討をつけることができる。
 g3のナイトの状態を確認すると、f2ポーンにしか守られていないことに気付く。逆に言えば、f2ポーンが失くなればg3ナイトは浮き駒になる。そこで、1...Nxf2が最初に思い浮かぶ。

 1...Nxf2 2.Rxf2なら、2...Rxg3でポーン1つ得になる。 2.Kxf2ならどうか。 まずは、最も強制的な手順である、2...Bc5+を考える。 ナイトを守ろうと思えば、3.Kf3が考えられるが、そうすると、3...Bg4#でメイトとなってしまう。その他の手では、いずれにせよナイトは守れない。 3.Be3としても、3...Bxe3 4.Kxe3 Rxg3でナイトが落ちる。
 以上から、Nxf2でポーン1つ得ができるという結論に達する。

 次にもう少し難しい例。

White to move

 初見の印象で思うことは、まずキングがオープンであること(ウィークポイント)に気付く。Qg4+からチェック可能。 次に、e5ポーンの特殊な配置に気付く。 1.Qg4+ Kh8 2.exf6でメイトスレットが生まれる

 もう少し詳しく見ると・・・ まず、b7のマスが実質的に浮いていることに気付く。すなわち、b7にいるビショップはg2のビショップによって利きを受けているからだ。したがって、1.Bxb7 Rxb7とした場合、b7のルークはa8-h1のダイアゴナルからの攻撃に対して無防備となる(b7がウィークポイントであることの確認)。 
 次に、先ほどのメイトスレットをもう少し詳しく見る。 1.Qg4 Kh8 2.exf6とした場合、黒がメイトを防ぐためには2...Rg8とするか、2...Bxf6とするしかない。 まず、2...Rg8とした場合、e7にいるビショップはポーンによって攻撃されたままになる。 次に、2...Bxf6とした場合、f6にいるビショップは浮いている。このラインの検討からf6もまたウィークポイントであると考えることができる(こういったバリエーションの流用については次回で扱う)。

 以上から、b7、f6、g8(キング)がウィークポイントであることがわかる。  複数のウィークポイントがある場合、考慮すべきは、ダブルアタックだ。そして、現状ダブルアタックが可能な駒としてはクイーンしか考えられない。 g8とf6、g8とb7はクイーンによるダブルアタックには適する場所にない。 ただ、f6とb7に関してはf3からのダブルアタックが考えられる。 しかし、c4にいるクイーンはf3に直接たどり着くことができない。ここでQg4+によって一テンポ稼いだ上で、クイーンをf3に置くという案が考えられる。

 以上から次のようなバリエーションが考えられるだろう。

-1.Qg4+のライン
1.Qg4+ Kh8 2.exf6? Rg8 3.Qh4。 このラインだと目的は達成できない。
1.Qg4+ Kh8 2.Bxb7 Rxb7 3.exf6 Bxf6 4.Qf3 ダブルアタック成功。(2...exf6でももちろん駒得)

-Bxb7のライン。
.1Bxb7 Rxb7 2.Qg4+ Kh8 3.exf6 Bxf6 4.Qf3 ダブルアタック成功。
1.Bxb7 Rxb7 2.Qg4+ Kh8 3.exf6 Rg8 4.Qf3  b7にいるルークに対するクイーンによる攻撃、e7ビショップに対するf6ポーンによる攻撃によるダブルアタック成立。



 と、言葉にすると長すぎてこんなこと考えられる訳ないだろという声が聞こえてきそうであるが、こういった作業は頭の中では言語化されずにもっと短く行われる。 そして優秀なプレイヤーはポジションをさっと見ただけで、こういったポジションの「要素」を瞬時に把握できるのではないかと思う(もちろんパターンのストックが大前提にあるとは思うが)。

 次回は読みについて扱いたい。

2013年7月31日水曜日

エンドゲームの勉強が生きた

 久しぶりにchess.comでStandardの対局。時間は15m10s。 相手は大分格上だったが、58手目でPhilidor Positionに到達してドロー。 劣勢からドローにできたというのも満足だが、SilmanのEndgame本で学んだ知識が生きたのがうれしかった。


2013年7月30日火曜日

スタイルとオープニング

 オープニングは何を選ぶべきかというテーマについて、よく自分のスタイルにあったオープニングを選ぶべきと指摘される。しかし、自分のスタイルなんてものはずっとわからなかった。むしろ自分程度のレベルでスタイル云々いうのも変な気もしていた(卑下して言っているわけではなく客観的な強さとして)。例えばヴァイオリンで音程が定まっていない演奏者がスタイルなんて言っても失笑ものだろう。何の分野でもスタイルというのはある一定程度のレベルに達してからの話だろう、と。

 この考えは今でも変わらないが、少しずつ「好きな」タイプのゲームはわかってきた。自分がプレイして楽しいというより、観ていて面白いという意味あいが強いが。 観ていて面白いと感じるのはタクテクスがビシビシ決まるタクティカルなゲームではなく、一つ一つ有利を重ねていって最後に相手が瓦解するような論理に支配されたポジショナルなゲームだ。

 もちろんポジショナルなゲームといっても、タクティクスはもちろんあるだろうし、有利が重なった最後の段階は必ずと言っていいほどタクティクスに結びつく。ただ、前者のタイプのゲームにあまり惹かれないのは、後者のタイプに比べて偶然性を感じるからだ。 サクリファイスからの10手のコンビネーションを見ても、なぜか相手のミスに起因するという意味で偶然性を感じてしまう。 むしろ、じわじわと相手を劣位に追い詰め、相手が負けたことが必然であると感じさせるようなゲームに惹かれる。

 この点、元チャンピオンのアナトリー・カルポフが面白いことを言っている。

 -Let us say that a game may be continued in two ways: one of them is a beautiful tactical blow that gives rise to variations that don't yield to precise calculations; the other is clear positional pressure that leads to an endgame with microscopic chances of victory. I would choose the latter without thinking twice. If the opponent offers keen play I don't object; but in such cases I get less satisfaction, even if I win, than from a game conducted according to all the rules of strategy with its ruthless logic. -

 カルポフの場合はプレイする側としての立場であろうけれど、観ている側としては同じように感じる。

 最近見ていたゲームでは、以下のものが面白かった。 特に2つ目のアレヒンのゲームは、チェスのゲームを見ていて初めて感銘を受けた。





 こんなことを考えていると自分もあわよくばそういうポジショナルなプレイをしてみたいと思うようになった。 そう考えるとオープニングも搾られる。

 しばらくいろいろなオープニングを試した。 まず一番悩んだのが、1.d4に対する応手。1.d4からのオープニングはトランスポジションも非常に多く、またオープニングによっては多大な労力がかかるものもあるため、選択に困った。

 悩んだ結果、結局Queen's Gambit DeclinedのTartakowerにした。 Tartakowerは、chess.comで出会ったギリシャ人に勧められたオープニングだが、プレイしていて比較的心地良い。 何より、駒のセットアップが調和的で、一見詰まっているように見えてお互いの駒がそれぞれ意味をもってあるように感じられるのが良い。

 King's Indian, Grunfeld, Nimzo Indian, Slav, 等々も試したり、オープニング概要本(MCO)等でちょい読みしたりしたが、結局辞めた。 KIDは基本的にタクティカルなオープニングであるし、白はラインを絞れるのに対し、黒は非常に多くの白の手に対応しなければならないことを考えるとやめた。

 Grunfeldは、理論的に非常に複雑らしく、その時点で萎えた。 Nimzo-Indianはおそらく全オープニングの中で最も豊かなオープニングの1つなのだろうけれど、これまたラインの多さ、それに対する労力を考えるとやめた。 ただ、...e6つながりで、QGDとセットで使うこともできるのでゆくゆくは使ってみたい。 Slav、Semi-Slavは最後まで候補に残ったが、ラインによってはとんでもなく複雑で萎えた。先ほどのギリシャ人に初心者はSlavはやめておけと言われたのを今になって納得した。

 1.e4に対しては、これまたいろいろ試した。 長らくSicilian Kanを使っていたが、このオープニングはもっと上級者向けのオープニングなのではないかと思うようになった。 ポジショナルなオープニングではあるのだろうけれど、基本的に中央放置の詰まった形になるため、高度な戦略が必要になるオープニングだと思う(Understanding Chess Openingsにも同様のことが書いてあった)。 
 また、1..e5もしばらく試したが、白の手が多すぎるのでやめた。 また、ルイロペスのメインライン等一部を除き基本的にはタクティカルなプレイとなるため、この点もマイナス要因。

 そこで回りまわってフレンチを使うことに決めた(今日から)。 まず第一に、1...e6を使うという点でSicilian Kanとの共通点もあるという点が良い(Sicilian Kanでも、白がc3とした場合には、French Advance Varationになることがある。)。 レパートリーの構築として、フレンチ+Sicilian Kanというのも可能になる。
  第二に、基本的にアイデア・プラン重視のオープニングであるらしいこと。 少しフレンチのゲームを見ていたら、超がつくほどの複雑なラインもあるようだが、1つぐらいそういうラインを含むオープニングを勉強するのは良いかもしれない。

フレンチの複雑なゲーム例。

 白については、1.e4から.1.d4に変えた。 とはいえ、膨大なレパートリーの中から全く道標がないのもあれなので、John WatsonのA Strategic Opening Repertoire for Whiteを指標にしようかと思う。 ラインラインライン・・・ばかりの本なので、この本を全部読むなんてことはしないし無意味だろう。ただ、一応この本のコンセプトとしては、戦略的・ポジショナルなオープニングを提供するということにあるので、ざっくりとしたメインラインとアイデア・プランぐらいは参考にしようと思う。

2013年7月29日月曜日

Mastering ... シリーズ

 最近はあまりチェスをやっていないが、CHESSBASEでたまに本を読んでいる。

 EVERYMAN CHESSがCHESSBASE関連のソフトウェアで読み込み可能なEbookを販売している(CHESSBASEのソフトを持っていなくても、無料の読み込みソフトもEVERYMAN CHESSでダウンロード提供している)。棋譜と一緒にコメントが並ぶというスタイルで読める。 だから、CHESSBASEでキーボードでカチカチやるだけで本が読める。 何が便利かといえば、いちいち棋譜並べをしなくて済むという点につきる。

こんな感じになる↓(クリックで拡大)




 そんなEbookをだいぶ前にいくつかダウンロード購入していたが、その中で思いの外良い本があった。Johan HellstenのMastering Opening StrategyMastering Chess Strategyという本だ。前者はオープニングにおけるストラテジー(イニシアティブ、展開等)の本、後者はミドルゲームにおけるストラテジーを紹介。

 この両者の本が何が良いかというと、その例の豊富さ。例えば、Mastering Chess Strategyに至っては600ゲーム近く紹介している。 例えば、「チェス戦略大全」としても翻訳されている、PachmanのComplete Chess Strategyの第一巻でも130ゲーム程度。 とにかく多い。 なぜそれが可能かといえば、全ゲームを紹介するのではなく、重要な局面の図面を提示して軽くコメントしていくというスタイルだからだ。これがパソコンでカチカチ見るという見方にはちょうど当てはまる。

長々した説明とかどうでもいいから早く実戦例を見たいという人にはオススメできると思う。 また、選ばれているゲームも面白く、コメントもわかりやすい。 そんなMasteringシリーズだが、三部作目としてエンドゲームのMastering Endgame Strategyも近日発売されるようだ。楽しみ楽しみ。

2013年7月26日金曜日

How to calculate Chess Tactics読了

 Valeri BeimのHow to calculate chess tactics読了。読了といっても途中から例をかなりはしょった。 総論的な感想としては自分よりもっと上級者の人を対象に書かれた本だと感じた。何より例が非常に難しいものが多い。

 この本を読む人の多くが、読みについての手法やタクティクスについての思考過程を学びたいと考えているだろう。ということで、読んだことの整理を兼ねてほぼ要約の感想を書く。

 "Tactics"の章と"Calculation"の二章からなっている。

1.一章 Tactics
 Tacticsの章は、最初にTacticsとはなんぞやという定義論が長々と述べられる。TacticsとCombinationの違い、Combinationにおいてサクリファイスは不可欠の要素か、等々、「へー」となることが書いてある。しかし、果たして実戦上に役立つ知識かどうかはわからない。むしろ本題は後半の「Logical Analysis」の部分。

 タクティクスにおいて難しいのはタクティクスの存在に気付くことだ。では、どのようにして見つけるべきかということに対するBeimの回答がこれだ。 Logical Analysisとは要するに、具体的な手を検討する前に、ポジションを構成している要素を精緻に分析するという手法だ。

 具体的には、①駒数の確認②彼我のポーンストラクチャーにおける弱点の確認③最後に動的な要素(展開の具合、イニシアチブの有無等)の確認という手順を辿るべきだとする。

 その上で、タクティクス(特に駒得を伴うタクティクス、メイト)が発生するためには戦略的な優位があることが前提条件にあるということを強調する。例えば、ビショップ1つがキングサイドに向いていてもタクティクスが成功する可能性は低い、しかし、クイーンとビショップ2つがキングサイドに向いていたらタクティクスが発生する可能性は高いだろう。 このように、タクティクスが発生するのは前提条件が整っている必要がある。

 ・・・なんてことが書いてあるが、これって既に何百回も言われていることである。特に、目新しいことではない。

 Beimの言うLogical Analysisの重要性はわかる。闇雲に手を検討する前にポジションを精緻に分析すべきことの重要性は最近少しずつわかってきた気がする。しかし、上記①②③では、あまりに抽象的かつ一般的のように思われる。 もちろん、実戦ではタクティクスがあるかどうかわからない状況であるために、上記①②③のような思考過程の方がより実戦的であろうとは思う。しかし、タクティクスの本について書いてある以上、タクティクスの発生条件に特化した分析手法についてもっと掘り下げて書くべきだ。この点は不十分に感じた。

 この点については、Tune Your Chess AntennaやUnderstanding Chess Tacticsの方がはるかに優れている。 両者ともBeimのいうLogical Analysisについて述べた本だということができる。いずれの本も、タクティクスの発生条件は何かというテーマで書かれた本だが、もっと具体的に書かれている。

2.二章 Calculation
 Calculationは日本語だったら「読み」なのかな。とにかく、二章は読みについての章。

 Alexander Kotovが"Think Like a Grandmaster"において提唱した読みについての手順を軸として書かれた章。このKotovの本は読み関連の本だと必ずと言っても登場する。 BeimはKotovの手順は不十分だと主張する。

 そもそもKotovが主張した手順というのは以下のようなものだ。

1.読みを始める前に、ありうる全ての手をリストアップしなけれなばならない(候補手 candidate moves)。これによって見過ごしが防げる。

2. 1を終えたら読みを始める。どの手から検討し始めるかについては、プレイヤーの性格やポジションの性質に拠る。最も難しいラインから検討する人もいるかもしれないし、逆の人もいるだろう。

3.上記によって検討されたラインは樹形図のように示される。

4.読みをなすにあたって重要なルールとして、一度検討したラインを再度検討してはならない。

 というもの。 そして第二章では、この手順では不十分だとして以下のように問題を指摘して修正する。

 第一点については、Kotovは候補手をどのように探すべきか述べていないと批判。そこで、第一点は、「候補手とは、当該ポジションにおいて論理的に見える手やもっともらしく見える手を意味する」と修正すべきとする。とはいえ、「もっともらしい」という点について、経験や直感によるところが大きいとも別の箇所で述べている・・・

 第二点については、候補手の1つが複雑過ぎる場合、そのラインはひとまず置いておいて別の簡単なラインから検討すべき。簡単なラインが成立しないときに限り、難しいラインを検討すべきとする。

 第三点については、そもそもラインを樹形図のように考えることに実益があるのか不明であるとして、検討したラインを頭の中で樹形図のように整理することは無意味であるとする。

 第四点については、各ラインについては原則として一回限りの検討を行うべき、しかし、これはあくまでも手を比較検討している段階で、実際に手を打つ前には読みに漏れがないか最終チェックすべき。また、次に述べるresulting movesの考えを利用する場合には、再度同じラインを検討することはやむを得ないとする。

 第四点に関連して、”resulting move“という概念を紹介している。(なお、この点についてあたかもBeimが考えたかのように書かれているが、Improve your chess now!でTisdallが既にこの考えを紹介していたような気がする…)。resulting movesというのは、ある候補手Aを検討してその手が成立しないことを確認した場合、成立しない理由からアイデアを得て別の候補手Bで利用するというもの。

わかりにくいだろうから、例を以下に示す。(Tune your Chess Antennaからの引用例)


 また、読む際に一気に最後まで読むのではなく、段階ごとにポジションの評価を加える方法、読み終わった最終局面のポジションの局面評価の重要性、いつ読みをやめるべきか等々の興味深いテーマが扱ってある。特に読みと局面評価は密接不可分であり、いくら長いラインが読めても最終的な局面の評価を加えることができなかったら意味がないということはなるほどと思った。

3.終わりに
 タクティクスの章については目新しいところがなかったのは事実だがタクティクスを検討する前の局面評価の重要性の点については意識づけられた。読みについての章は、読みについての1つの手順が示されているという点では参考になった。確かに、Kotovの手順は理想的で実戦的ではない。ただ、Beimの修正も特段変わったものというものでもなく常識的なものではあるが。

 結論としては、この本を読むよりも、Improve your chess now! やTune your chess Antenna、Understanding Chess Tacticsを読む方が実益はあると思う。

 ということで面倒な読書も終わったので、今度はタクティクスについて考えるところ、何をしたらタクティクスが上達するか等の点について自分なりの考えを書いてみたいと思う。

2013年7月21日日曜日

playok

 最近playokでもプレイし始めるようになった。長めの時間設定でもすぐに相手が見つかるのが良い。また、最近chess.comで負け続けで不快ボルテージが高まっていたため、たまには違うところでプレイするという意味も。
 
 そんな中、つい先ほどのゲームでだいぶ前のゲームの見直しが活きた。クイーンズ・ギャンビット・ディクラインドを使っていると、たまにこのゲームのようにc5と指してくるプレーヤーがいる。対応を知らないと、そのまま窮屈な形を強いられることになるが、前に同じ手をくらったことがあったので対応を覚えていた(実際は、10手目のミスにより危うく優位が帳消しになりかけたが)。

(popuriiというのが自分)

 もう一個、だいぶレーティングが下の相手だったが、良い勝ち方ができた。攻撃を左右に振り分ける戦い方ができてよかった。それにしても、playokってchess.comとレーティングの価値が全然違う。この相手にしてもchess.comだったら1400-1600ぐらいの印象を受けた。






 タクティクスについて考えてみようということで、Valeri BeimのHow to Calculate Chess Tacticsという本を読んでいる。 しかし、ハイパーつまらん。冗長で回りくどく、無駄に例が多く、読んでいてイライラしてくる。似非アカデミック臭が半端ない。既に半分ぐらい読んだので、一応最後まで読むつもりだが、苦痛。 あといくつか気になるものを読んで、タクティクスについて考えるところを書いてみたい。 特に、タクティクスを検討する前の盤面分析、読みのやり方、候補手等のテーマについて。

2013年7月17日水曜日

フィリドールの音楽

 チェスでフィリドール(Francois-Andre Danican Philidor)というと、フィリドール・ディフェンス(1.e4 e5 2.Nf3 d6)が思い浮かぶ。チェスの歴史を少し調べればすぐに出てくる人で、「ポーンはチェスの魂」という言葉で有名。ベント・ラールセンが、最も時代を先んじていたという意味では、最も偉大なチェスプレイヤーだったと評価している。ただし、フィリドールの考えを理解する同時代人はおらず、彼の考えが理解されるのはだいぶ後になる云々云々、そんな話をよく聞く。

 そんなフィリドールだが、フィリドールは音楽家としても有名だった。バッハ一族ではないが、フィリドール・ファミリーは音楽家の家系だった。これらのことはWikipediaにも書いてある。

 以前からどんな音楽を書いていたのかは気になっていた。今日思い立って、NML(Naxos Music Library)でCDを見つけたのでいくつか聴いた(CD) 。聴いたのは「転調の技法(The Art of Modulation)」。ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバ、オーボエ、チェンバロの四重奏曲。

Youtubeに1番の第一楽章だけあった(CDには6番まで収録されている)。





 この1番の第一楽章にしてもなかなかよいではないか。バロック時代のノリの良い対位法音楽は大好物なので、1;16~からの緊迫感のある掛け合いなんて大好き。 一段落してからの(若干陳腐な)泣かせるメロディー(2:37~)など非常にヘンデルっぽい。
 他の2~6番通して、全体的に健康的、快活でわかりやすい。ひねくれた曲はない。また、メロディーメーカーとしての才能も感じる。口ずさみたくなるような心地良い旋律が随所に現れる。そして何よりリズム感が良く、聴いていると自然に身体が揺れる。他の音楽も聴いてみたくなった。

 惜しむらくは鍵盤楽曲を残していないことか。おそらくいくつかは鍵盤作品も残しているのだろうが、少なくともIMSLPでは見つからなかった。ネット上の楽譜店でも扱っていない。 知っている人がいたら教えて下さい。

2013年7月11日木曜日

タクティクス・・・



 中盤まで押していたが、タクティクスに気付かなかった。そして、31手目で霊長類レベルのブランダーをしてそのまま他界した。

 19手目と21手目でタクティクスの見逃し。19手目はまだしも、21手目は難しくないタクティクスだったので気付くべきだった。

 まだまだ微妙なポジショナルプレイやギスギスしたエンドゲームで勝負がつくレベルではなく、しょぼいタクティクスやまぬけなブランダーで勝負がつくレベルにいる。そう考えると、タクティクスを強化しないといけない。何より、今のままでは今より上のレベルにはいけないだろう。

 chess.comのTactics Trainerは、大体1750~1850ぐらいでうろついている。最高が1978。対局相手のプロフィールを見ていると、同じぐらいのレーティングの人は大体2000ぐらいある。人によっては2300とか2400という人もいる。

 なので、これからタクティクス力を上げていきたいと思う。 とりあえずの目標はChess.comのTactics Trainerで2000を超すこと。次は2200。 できれば、年内に2200を越したい。 これからいろいろ試していきたいと思っているので、その度に途中経過を報告したいと思う。

2013年7月10日水曜日

Simple Chess / Silmanエンドゲーム本

 無駄に本を持っている割にまともに読んだ本がほとんどないという状況だが、少しずつちゃんと読むことにし始めた。

1.Simple Chess
 まずは、Michael SteanのSimple Chess。 一章あたり20~30ページ×7章と短い本なのですぐに読み終えた。CHESSBASEに自分の要約コメント等を打ち込みながらだったが、とりあえず早く読んで回すのが良いかと考え、大体1日90分ぐらいで一章を読み進めるハイペースで読んだ。

 評判通りの良い本だった。弱いポーン(backward, isolated, doubled pawn)が・・・とか、バッド・ビショップが・・・とか、スペース・アドバンテージが・・・とか知っていたが、もう少し理解が深まった。

 当たり前の話といえば当たり前の話だが、マイナーピースの優劣、ポーンストラクチャーの優劣等はそれ自体が目的なのではない。 あくまで、中間目的としては駒得、そして最後にメイトするために存在する。このことに改めて気付かされた。

 仮に、グッド・ビショップをもっていたり、スペースアドバンテージを有していたとしても、駒得等の具体的結果につながらなかったら意味がない。 それらの要素をどのようにして中間目標である駒得そして最終的なメイトにつなげるのかという点が強調されており、目から鱗。

 また、ポーンとピースの関係についても勉強になった。 弱いポーンをもってしまうと、ピースはそれを守るために活動範囲が著しく狭められてしまう。そうすると、相対的にピースの価値が劣ることになり、最終的には相手の攻撃に耐え切れなくなる。 ポーンが弱いということは、ポーンそのものの価値だけではなく、ピースの価値も下げる。ポーンそれ自体で考えてはダメ。これまた目から鱗。

 とはいえ、こういう知識は使えなかったら何の意味もない。特に、ハイペースで読んだのでまともに頭に残っていない。 なので繰り返して脊髄に叩きこもうと思う。データベースに既にぶちこんであるので、後は回すのみ。

2.Silmanのエンドゲーム本
 Simple Chessを読んだ後に、ついにエンドゲームの勉強を始めてしまった。エンドゲームを勉強することは重要と知りつつも、その面白くなさそう臭からずっと敬遠していた。パンドルフィーニ本も読んだりしたが、その苦行林の修行のごときつまらなさに半分ぐらいで放り出してしまった。

 エンドゲーム本として何を使うかについては、いろいろ悩んだが、Jeremy SilmanのSilman's Complete Endgame Courseにした。最大の理由は、レーティングクラス別に順に進めるようになっていること。 例えば、パンドルフィーニ本の場合だと、いきなり地獄のB+N+K vs. Kチェックメイトなんて出してくるが、そんなことはない。(そもそもこの本は、B+N+K vs. Kは「学ぶ必要がない」として紹介されていない。)

 難易度順というだけでなく、「実戦に出そうな順」で並べてくれているのも良い。勉強したらすぐに使えそうな知識を得ることができる。さらに、パンドルフィーニ本のように、テクニカル・ポジション(勝ち負けがはっきり決まっている理論的なポジション)だけでなく、実戦的なテクニックも教えてくれる。

  例えば、クラスD(レーティング1200-1399)で、Fox in the Chicken Coupなんていうイカガワシイ命名の手法を紹介している。 ボードの右と左にポーンがあったら、左のポーンをプロモーションさせるように見せかけそちらに相手のキングの注意を引きつつ、相手のキングが左のポーンをプロモーションを止めようとしている隙に、右のポーンをプロモーションさせましょう、というもの。 知っていたら使える。

 等々、良いことづくめのようだが、欠点としては冗長なことか。 どうでもいい言葉が多い。ユーモアと取れるところもあるが、もっと圧縮して短く書いて欲しい。好みの分かれそうな点。ただ、時たま笑えるところもある。

RULE : もし相手のポーンがナイトかルークポーンの場合で、自分のキングが相手のポーンの前にあるときは、たとえロボトミー手術の傷が完治してなくても簡単にドローにできる。

というのには笑ってしまった。

 また、クラス別ごとに学ぶという体裁のため、網羅的な知識が得られるわけではないということも欠点の1つかもしれない。しかし、これは、シルマン自身が長年のコーチ経験からこの程度のレーティングの奴だったらこれぐらいでいいだろうという選定のもとで行なっているので、逆に利点といえるかもしれないが。

 そんなシルマン本だが、とりあえずBクラス(レーティング1600~1799)まで読み終えた。Bクラスでも既に自分のレーティングより高いであろうと思われるが、まだなんとか理解できた。 この本も、一日90分程度で3日ぐらいで一気に読んだ。 以前にCクラスまで読んでいたので、ほぼBがメインだったが。 CからBまでは全部CHESSBASEのデータベースにぶちこんだので、後はひたすら回すのみ。

2013年7月8日月曜日

快勝+ボッコボコ

 久しぶりにchess.comで対局。1つは快勝、もうひとつはボッコボコにされた。同じぐらいのレーティングの相手になすすべなくやられるということはそうそうないが、今回負けたゲームでは、何もできないまま文字とおりなすすべなくやられた。初めてあたったオープニングだったということもあるが、ミドルゲームで完封負け。11...Ng5!から一気に交換を迫られ、白はバッドビショップが残るのみに。続いて、c4にナイトでアウトポストをとられるも、白マスのため黒ビショップでは対抗できず、ナイト無双で粉砕された。途中でe3-e4でビショップを解放すべきだったが...f5によってその機会も奪われ(ついでにこの手によって、ケチなトラップも潰された)、後は思うままに蹂躙された。グッドナイトvsバッドビショップの典型例みたいなゲームになってしまった。 

両方とも注釈付きで棋譜を載せようかと思ったが、疲れたので勝った方だけ注釈付き。


勝った方

 
負けた方


不快なホイッスルを消去

 かなりどうでもいい話ですが・・・

 FritzやChessbaseを使っているとき、イリーガル・ムーブ(例えば、黒番なのに白駒を動かす等)の時になる不快な無駄に大きいホイッスル音が鬱陶しくてかなわなかった。なぜかこの音だけが設定画面で消音できないというワケワカラン設定。しかし根本的な解決法を発見。 

 プログラムがインストールされているフォルダのSounds→Boardの中にあるillegal.wavを無音のwavファイルに置換する。これで、あの耳障りな音とおさらば

例:
C:\Program Files\(chessbase, fritz等)\Sounds\Board

2013年7月7日日曜日

これは面白い -ポーンストラクチャーによるポジション検索-

 前回の記事で、プレイしている途中にプランが立てられない等何をしていいかわからない状況になったとき、似たようなポーンストラクチャーでのマスタ-のゲームの参照する方法があるということを書いた。(http://chess4real.com/a-hardcore-guide-to-analyze-your-chess-games/ このページに書かれていた方法。)

 早速、今日黒番でルイ・ロペスをやっていて、マッタクワケガワカラン状態になったので、それに従ってやってみた。やり方としては、CHESSBASEを開いて、Megadetabaseのゲーム検索(Fileter)で、ワケガワカラン状態だったころのポーンストラクチャーでポジション検索(レーティング双方2400以上の指定)。いくつかマスターのゲームが出た。

 確かに、これは非常に良い。非常に。 明確に「こうやってプレイする」ということが明らかになったとまではいかないが、こういうやり方もあるのかと非常に参考になった。これからはこれを取り入れてみよう。

 ちなみに、よくわからん状態だったポジションはこんなような形↓ こういうポーンの形。 d3のルイ・ロペスから到達。





ゲーム例1。ルイ・ロペスからではなく、シシリアンからの変化。ギッチギチにロックされたポーンの壁を突破して見事に勝利。g6があるから、f5もいけるよねと納得。このゲームは注釈付きだったので、結構勉強になった(Megadetabaseには、注釈付きゲームも含まれている。)




ゲーム例2。 変にポーンをプッシュして失敗する例が続いたので、こういう複雑な形のときにポーンを進めるべきか進めるべきではないかで悩むことが多かった。ポーンプッシュ恐怖症に陥っていたが、ポーンを進めてセンターを開けてもやりやすいポジションができるようだ。最後は見事にメイトスレットからのフィニッシュ。




ゲーム例3。こんなルイ・ロペスの変化があるのかと驚いた例。ナイト何回動かすのかと思うほど、ナイトの大旅行。ちなみにこのバリエーションの黒の勝率は非常に高い。



ゲーム例4。f5からポーン交換、gファイルを開いてそこから怒涛のラッシュ。ナイジェル・ショートの超タクティカルなゲーム。

2013年7月5日金曜日

チェスが上手くなるには・・・5.自分のゲームの見直し

5回目。今回はゲームの見直しについて。

第五回目 チェスが上手くなるには・・・5.自分のゲームの見直し

1.ゲームの見直しの意義
 初級者段階で最も上達につながるのはタクティクスだと思うが、ある程度タクティクスもできるようになった次の段階(そしておそらく最後まで)で最も上達に役立つのは自分のゲームをしっかりと検討することだと思われる。

 ゴルフの本をいくら読んでもゴルフが劇的に上手くならないように、結局は実践→修正というステップを踏まない限り、レベルアップは望めない。したがって、いくら本を読んだところで、自分のミスを明らかにしてそれを修正するという作業がなければ、上達は望めない。 そのためにゲームの見直しが必須だ。

 特に初級者~中級者段階では、穴ぼこだらけなので、いかにしてそれらの穴を埋めるかということがよりいっそう重要となる。

2.具体的な方法
 具体的な方法論というのは、人によってまちまちだが、一般的に言われているような方法としては以下のようなものだろうか。

①ゲーム直後に、ゲーム中の思考過程で気になったものを書きだす。
②ブランダー、タクティクスに気づかなかったポイントを確定する。これはソフトですぐにチェック可能。
③ゲーム中での勝敗の別れ目のポジション、決定的だと思われるポジション(Critical Position)を確定する。
④ ①、②、③それぞれにつきソフトの助けを借りて検討する。
⑤④の検討の結果明らかになった問題点を一般化して要約する。
⑥オープニングのラインを検討。

(他にも、自分がプランが立てられなかったポジションにつき、データベースで似たポジションのゲームを探し検討するという興味深い方法を提案しているところもあった。 
http://chess4real.com/a-hardcore-guide-to-analyze-your-chess-games/

 一番無意味な検討というのは、「ここで間違えた」と確認だけして終わるというもの。これでは次に何も残らない。「なぜ間違えたのか」「それはどのようにすれば避けられ、そのためには何をすれば良いのか」というところまで明らかにすることが望ましい。 そうすれば、次に似た状況にあるときにミスを避けることができる可能性が上がる。 問題の原因の明確化→対策。これが重要。

3.例
 ゲーム中、誤った思考過程を辿ってしまうことは非常に多い。例えば、最近こんな例があった。


 
 上記ポジションで11...f6としてしまったが、ソフトの最善手では、11...Bxf5が示された。 なぜ、このポジションで11...Bxf5としなかったかといえば、e5のポーンがナイトとクイーンにアタックされていて浮いていると「勘違い」(誤った思考過程)してしまったからだ。(そして、クイーンと同じファイルにキングが並ぶのが避けたかった。)

 しかし、分岐に書かれているように、白はここで12.Nxe5とすることはできない。なぜなら、12...Nd4!があるからだ(13.Nc6+以外のバリエーションだと、ナイトがクイーンにピンされてナイトが落ちる、又は、Nxc2のフォーク)。

 これは結局、「e5が浮いているから、12...Bxf5はできない」という短絡的な思考に基いている。一般に、強制手順(forcing moves)はチェック・キャプチャー・スレット等が失くなる状態、すなわち静止状態(Quiescence)に落ち着くまで検討すべきとされている。

 しかし、上記のような誤った思考を辿ってしまったため、12...Nd4!という、クイーンをアタックする明らかな強制手を見逃してしまっている。 本来ならば、12...Nd4からのありうる強制手順も静止状態になるまで読むべきであった。(一般にこのようなミスは、Quiescence Errorという)

 したがって、上記ミスからは、「強制手順を含む手は、初見の印象に惑わされず、出来る限り静的状態に落ち着くまで読む」などというような教訓が得られるだろう。

 この例が果たして適当かはわからないが、いずれにせよ、「何が誤っているのか」ということを突き詰める作業こそが最も重要だ。原因が明らかになりさえすれば、対策を練ることができる。逆に、原因が明らかとならなかったら、その点については次回も間違う可能性が非常に高い。 そして、多くのミスが誤った思考過程に基くものであるから、誤った思考過程を矯正するということを意識すべきだろう。

 この作業を繰り返すうちに、「必ず」自分がいつも繰り返しているミスに気付くはずだ。後はそれを修正する努力をすれば良い。

4.その他

 できれば、自分のゲームは保存しておくことが望ましい。 私の場合は、CHESSBASEとFRITZを使っている。FRITZで具体的にゲーム検討して、CHESSBASEで細かい点について付加する等。 データベースがあること、検索が容易なこと、注釈のオプションが非常に豊富なこと、オープニング・レパートリーとのリンクが簡単なこと等々から、CHESSBASEが一番使いやすいと思う。

5.参考にしたページ
・10 Tips for analyzing your Chess games
http://roman-chess.blogspot.com.br/2009/08/10-tips-for-analysing-your-chess-games.html

・A hardcore guide to analyze your chess games in 12 steps
http://chess4real.com/a-hardcore-guide-to-analyze-your-chess-games/

・How to Analyze Chess Games
http://www.chess.com/article/view/how-to-analyze-chess-games

・Game Analysis for Improvement in Play
http://pathtochessmastery.blogspot.jp/2011/08/game-analysis-for-improvement-in-play.html

2013年7月2日火曜日

策士策におぼれる

 浮いているポーンに飛びついてタクティクスを決められる、クイーンでナイトをとったらディスカバードアタックでクイーンが取られた等々、トラップを仕掛けられてそれにはまってしまうことは多々ある。

 しかしその逆もある。自分でトラップを仕掛けて自爆する。見事な例を発見。


2013年6月29日土曜日

Ruy Lopezでフルボッコ(にされた)

 最近対局をほとんどしていなかったのだが、久しぶりに一局。chess.comで相手が見つからなかったので、Playchess.comで一局。

 1.e4に対する黒番は、しばらくシシリアン・カンばかり使っていたが、自分のレーティングレンジのプレイヤーがあまり知らないオープニングで意表をつくようなプレイというのはケチな気がしてきて、辞めることにした。

 ということで1年ぶりぐらいでRuy Lopezに。結果的には、中盤から何をしていいかわからず、自壊した。今回の反省点と学んだことは、展開が優位のときは、展開の優位性を優先すべく1つぐらいのポーンをサクリファイスしてもかまわないということ(11...bxc3のバリエーションのこと)。

2013年6月28日金曜日

チェスが上手くなるには・・・4.タクティクスその2

 前回の続きでまたタクティクス。 これまた最初に述べるのを忘れていたが、このシリーズについては、一応は、私自身の意見というよりも、今まで読んだ本、ネットの記事等から得たものを基にして書くようにしている。

チェスが上手くなるには…4.タクティクス・チェックメイトその2

1.タクティクス問題演習の学習方針

 前回の記事でタクティクス・チェックメイトの基本的なパターンを覚えるのが重要だということを書いた。もちろん、その後は数をこなすべきということになる。その前にチェス学習について思うところを。

(1)パターン認識
 成人がチェスを学習する場合、子供に比べ、やり方を意識すべきだ。子供の場合記憶に対する刻み込みが成人よりも深いし、何より吸収力が高い。したがって、数をこなせばこなすほど身に付けるものも多いという面がある。しかし、大人の場合はそうはいかず、すぐに忘れるし、がむしゃらにやっても効果は薄い。

 また、何より、一日に3時間以上チェスにかけるなんていうことも現実的には厳しい。そう考えると少ない時間でできるだけ上手くなりたいなら、有効に時間を活用しなければならない。じゃあ、どうすべきか。

 現在チェス界では、マスターとそれ以下の最大の差は、それまでに蓄えてきたパターンのストック数にあるということが半ば通説化しているようだ。Adriaan de Grootという学者が、同じポジションにつきマスター、アマチュアに考えさせ、思考過程を述べさせるという実験をした。結果、読みの深さには大して差はなく、マスターらはむしろ「直感」によって最善手を選んだ。そして、その直感とは何なのかといえば、前に見たことがある、つまり、「似たパターン」を知っていたということにあった。

 De Grootの実験で用いられたポジションはタクティカルなものではなくポジショナルなものであったが、パターン認識能力はもちろんタクティクスにも関わる。むしろ、タクティクスこそがパターンを知っているかということが重要になる。

 確かに、日々タクティクスの本を解いていて、それが何が目的なのかと考えれば、目の前の問題を解くことではないだろう(もちろん、タクティクス問題を解くこと自体に喜びを感じるのならば別だが)。 むしろ、何十問か何百問か解いている問題のうちに「似た」問題が実戦に出た時に解けるようにするためだろう。

(2)具体的方針
 以上のように考えると、タクティクス演習で主眼とすべきは、無目的に問題数をこなすよりも、パターンのストックに重点を置くべきということになる。つまり、むやみやたらに多くの問題を適当に解いていくのではなく、一定数の問題を「繰り返して」確実に「潰す」ことを優先すべきことになると思う。記憶に刻み込むには、結局、集中力と繰り返ししか方法はない。

 「潰す」ということが人によっては2周することかもしれないし人によっては7周することかもしれない、そのあたりは個人差はあるだろう。いずれにせよ、薄い印象の数を増やすよりも、繰り返して無意識レベルまで叩きこまれた濃い印象を残すべきだ。 タクティクスのパターンも限られている以上はなおさらだ。

 このように考えると、具体的演習方法としては、繰り返しがしやすいという点で、ネットのタクティクスサイトによるよりも本に軍配が上がるだろう。もっとも、Chess Tempoの有料版では、「2013/6/29日以降に間違えた問題」というように指定することができるので、Chess Tempoでも十分いける。


2.タクティクスの仕組み理解
 
 最近、2冊ほど面白い本が出ている。Understanding Chess Tacticsという本とTune your Chess Antennaという本だ。後者については前々回の記事で触れた。

(1)Understanding Chess Tactics
 まず、前者のUnderstanding Chess Tacticsだが、この本は、フォーク、ピン等々のタクティクスのモチーフの仕組みについてこれでもかというぐらい詳しく解説してくれている。例えば、ピンであれば、ピンする駒、ピンされた駒、背後の駒と3つの要素に分けて、それぞれの要素に固有の問題点についてチェックしていくという徹底ぶり。

 この記事を読めば詳しいことはわかるが(なかなか示唆的なのでオススメの記事)、この本の著者は25歳からチェスを始めてFMになったという異色の経歴を持つ。この人も同様に、大人がチェスをやるのならば、合理的に考えて学習すべきとする。そして、タクティクスについても、タクティクスの構造をしっかりと理解して、その発生条件を理解すべきとする。その主張の顕れがこの本ということになる。

 ただ、ドイツ語からの翻訳版なので文章が読みにくく、英語が苦手な人には読みにくいかもしれない。 その点を除けば、非常に素晴らしい本。理詰めで考えたい人にはオススメ。第二版は、巻末に300問の確認問題もある。

(2)Tune your Chess Antenna
 こちらの本もUnderstanding Chess Tacticsに趣旨は似ているが、微妙に異なる。Understanding Chess Tacticsの方が、タクティクスのモチーフそのものに焦点を当てているが、こちらの本は、もっとざっくりと、「一般的にどのような条件が揃った場合にタクティクスが発生しやすいか」ということに焦点を当てている。

 具体的には、前々回の記事の「2.タクティクスの回避」の項で述べた要素について、軽く解説を付した後、問題演習用の問題が提示される。 文字数が少なく、英語も平易なので、英語が苦手な人でもオススメできる。 

2013年6月25日火曜日

変なオープニング3: Ruy Lopez Alapin Defence

変なオープニング第三回は、Ruy Lopez Alapin Defence。
 最初にこのシリーズのコンセプトを述べていなかったが、奇抜または珍しい手ではあるが意外にそこそこ戦えるオープニングを紹介していくことにしている。したがって、明らかな悪手といえるオープニングについては紹介しない。

第三回: Ruy Lopez Alapin Defence

 ルイ・ロペスはシシリアンと並んで定跡の研究が最も進んでいるオープニング(らしい)。例えば白番でルイ・ロペスを選択する場合、Steinitz, Open, Closed, etc...たくさんの黒番の手に対応できるようになっておかないといけない。

 そんなルイ・ロペスだけあって、黒の使うサイドラインは多く、同時にいかがわしいものも多い。最もいかがわしそうなものなら、1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a5?!という...a5とすることに何か意味があるかわからないBulgarian Variationというのがある。ただし、これは奇抜狙いだけっぽいので除外。

 そうすると、いかがわしく、かつ、多少は使える(かも)怪しいサイドラインとして何があるか。そこで、今回紹介するのが、Ruy Lopez Alapin Defence。


 
 d6とする前にビショップを外に出し...Nge7とする。Nf6としてしまうと、e5のポーンがとられてしまうので良くない。白としては、Na3-Nc4で黒ビショップをつぶすのが良い。 こんないかにもダメそうなオープニングだが、それほど勝率は悪くない。例えば、自然そうな展開で・・・4.c3 Ba5 5.0-0という風に進んだ場合(上記ダイアグラムの最終局面参照)の勝率は、CHESSBASEのMegadetabase(500万ゲーム以上収録)によれば・・・

29% : 34% : 37% (白勝:ドロー:黒勝)

と黒が勝ち越している。もっとも、サンプルが85ゲームと少なすぎ信憑性に欠ける。ただ、同ポジションにおいて、マスターレベル(レーティング2200以上)の場でも同様に

18% : 36% : 45% (白勝:ドロー:黒勝)

と黒が大幅に勝ち越している。(但し、これまたゲーム数が22しかないので信憑性のカケラもないが・・・)。

 とはいえ、こんないかにも怪しいオープニング、さすがに強いプレイヤーは使っていないだろうと思っていたら、いた。しかもGM。スウェーデンのJonny HectorというGM。 最高レーティングは2590と非常に強い。マイナーなオープニングを使うことでも有名なGMらしい。 そんなJonny Hectorのゲーム+興味深そうなゲームをいくつか紹介。



Alexander Ivanovは強いGMだが、そんなGMがこのいかがわしいオープニングにやられてしまった棋譜。オープニングがどうこうよりも、最後に大ブランダーをしてしまったのが敗因だが・・・



 ギスギスした互角のルークエンディングにまでもつれこんだ末Hectorの勝利。




 スーザン・ポルガーにも使ってみました(Zsuzsaはハンガリー名)。が、負けた棋譜。

参考資料
No Passion For Chess Fashion


2013年6月19日水曜日

変なオープニング2 : 1...g6 2...Bb7 3...c5セットアップ

第二回 : 1...g6 2...Bb7 3...c5セットアップ

 変なオープニング第二回目は、1...g6 2...Bb7 3...c5を用いたオープニング群の紹介。

 1...g6というと、1.e4 g6のModern Defenceが代表例。特に下に挙げる...a6のバリエーションは、ドローよりも勝つか負けるかの戦いになりやすい激しい展開が続くオープニング(らしい)。黒の勝率も高い。 一時モダンディフェンスをレパートリーに加えようかと思っていたため少し調べていた過程でいくつか興味深いオープニングを発見した。 そこで今回は、Pterodactyl Defence、Dzindzi Indianを紹介したいと思う。

 Pterodactyl Defence、Dzindzi Indian、いずれも、1...g6 2...Bg7 3...c5を用いているという点に共通点がある。ちなみに、ほとんど全てのオープニングに対して、1...g6 2...Bg7 3...c5のセットアップを用いるシステムは、Sniperと称されるようだ。ただ、Modern DefenceでいけるところをあえてSniperで戦うかどうかは各人の好みになるだろう。そこで、今回は、Sniperは紹介しない。興味がある人は、Sniperを扱った本がEVERYMAN CHESSから出ているので参照してほしい。

 いずれのオープニングも勝率は非常に高い。具体的には、レーティング2150以上のプレイヤーの残したゲームにおける勝率は「白勝:ドロー:黒勝」で表すと・・・

Pterodactyl Defence : 28% : 45% : 27%
→1.e4 g6 2.d4 Bg7 3.Nf3 c5 4.Nf3 Qa5+の時点での勝率

Dzindzi Indian : 31% : 27% : 42% (!!!)
→1.d4 g6 2.dc4 Bg7 3.Nc3 c5 4.d5 Bxc3+の時点での勝率。


となる。もちろんこれらのオープニングが特に優れているから勝率が高いというよりも、白が準備不足だったというのが勝率の高さの最大の理由だとは思う。

 しかし、少なくとも前回のSt.Georges Defenceに比べればサプライズウェポンとしての価値は大きいだろう。まだあまり分析されていないようなので(知らないだけかもしれないが・・・)、自己研究の余地もありそうなオープニングである。サプライズウェポンとして是非。 (ただ難点として、いずれのオープニングも、1.e4 2.d4 3.e4(or 1.d4 2.e4 3.c4)、そしてc5が来たらd5としたら避けられてしまう・・・)

 まずは前提としてModern Defence.

1.Modern Defence

ゲーム例

 
 ただ、Modern Defenceを使った場合、白がc4とするとModern Defenceが使えない。通常は、King's Indian Defenceに移行する。Averbach Variationに移行することもある。

2.白がc4とした場合

 もちろん、King's Indianを使えるならばこれで良いだろうし、Averbach Variationでも良いというならばこれでも良いだろう。 ただ、King's Indianは覚える労力が大変そうなので嫌だ、Averbachの他にも代替策がないのかと探していたら、面白いものが出てきた。

 第一は、Pterodactyl Defence.

3.Pterodactyl Defence

ゲーム例。 Move orderがModern Defenceの典型例と異なるが、もちろん、1.e4 g6からでも同じポジションに到達する。




第二に、Dzinzhi Indian。 このディフェンスは、e4-d4ではなく、d4-c4のセットアップに1...g6 2...Bb7 3...c5としたらどうなるのかと調べていたときに発見した。

4.Dzindzi Indian


ゲーム例。つい最近のスーパーGM(レーティング2,700以上)の棋譜。


5.参考資料
 簡易にではあるが、Chess.comでFM Eric SchillerがPterodactyl Defenceについて記事として扱っている。興味のある人は参照してほしい。
Pterodactyl vs. Grandmasters
Pterodactyl: Unpin Variation with 5.Bd2
Take flight with the Pterodactyl

また、最近同FMがPterodactyl Defenceについての本も出版した(未読)。
Fly the Pterodactyl

Dzindzi Indianについては、GM Ron W Henleyが二冊本を出している(未読)。
Crushing White: The DZINDZI INDIAN!: An Easy To Learn Chess Opening & Strategy
Crushing White: The DZINDZI INDIAN! An Easy to Learn Chess Opening & Strategy Volume 2

Dzindzi Indianの産みの親のGM Roman DzindzichashviliによるDVDレッスンもある。
Roman's Lab: Vol 76: Beating 1.d4 with the Aggressive Dzindzi-Indian Defense, Part 1
Roman's Lab: Vol 77: Beating 1.d4 White Avoids Playing Against Dzindzi-Indian Defense, Part 2


2013年6月15日土曜日

チェスが上手くなるには・・・3.タクティクスその1

 前回まででミスについてのお話は終わり。ミスを減らすという作業が自分のマイナス部分を除去するという作業とするなら、今回から扱う内容は、プラスを加算していく作業。(ただし、特に初中級者の段階ではマイナス部分を除去するという作業が重要と思われる。)。すなわち、タクティクス、ストラテジー、オープニング等について扱っていく予定。

チェスが上手くなるには…3.タクティクス・チェックメイトその1

 はじめてばかりのプレイヤーが実力を伸ばしたいと考えるならば、何よりもまずタクティクスに習熟する必要がある。タクティクスによって駒得すれば勝てるし、逆もまた然り。万年ナイトフォークに気づかないようでは実力は絶対に伸びない。また、チェックメイトのパターンも同様に覚えなければならない。

 では、タクティクスの実力を伸ばすために何をすればよく、どのようにすれば効率が良いか。(以下では、「大人」の学習を念頭に置いている。)

 これについてはいろんな考え方があるが、一般的に述べられていることをまとめたら次のようになるだろう。

①タクティクス・チェックメイトの各モチーフを理解する。
②問題演習
番外 タクティクスの仕組み理解

今回からそれぞれについて扱っていく。まずは、モチーフの理解について。

1.タクティクスのモチーフ・メイトのパターン

 タクティクスのモチーフとは、ピン、フォーク、ディスカバードアタック、Zwischenzug(In-between moveとも言う)等々のことである。 具体的には

http://chesstempo.com/tactical-motifs.html

ここのページに非常に細かく分類して書かれている(英語)。

「チェス入門」にもピン等のいくつかの基本的なモチーフが紹介されている。

http://chess.plala.jp/

 実戦において、強制手順をひたすら潰して手を読んでタクティクスを発見するということもある。しかし、複雑なタクティクスになればなるほど、最終的な局面、つまりタクティクスのモチーフの原型状態を想定して手を読むということが多くなる。特にメイトならばほとんどの場合、メイトの最終形を想定して手を読むだろう。

 例えば以下のような例では、最初にナイトフォークというモチーフに気づいてから、それを「達成」するために手順を考えることになるだろう。



 最初の段階では各モチーフがどのように現れるのかということをしっかりと理解することが重要だ。そして、パターンの学習に注意を傾けるためにも、難しい問題ではなく簡単な、モチーフがわかりやすく表れている問題を繰り返し解くことが有効と考えられる。

 では、タクティクス・メイトのモチーフ・パターンを理解するためには何をすれば良いか。具体的には本による学習とソフトウェア・タクティクス専門のサイトによる学習が考えられる。人によって好みがあるだろうから、複数紹介することにする。

 いずれの方法によるにしても、繰り返すことが重要だ。そもそもこのような「問題演習」を行うのは、問題で学んだ局面と「似た」状態が実際のゲームで現れた場合にこなすためだ。したがって、特に基本的なモチーフ・パターンについては、見て即座に解けるというレベルにするのが望ましい。

(1)本による場合
ア タクティクス
 以下に挙げる本は、①タクティクスのモチーフの解説(または、モチーフ毎による分類)があり、②難易度が低い問題を集めたもの、という条件を満たす本の中からオススメできるもの。どれか一冊あれば十分だろう。

- Winning Chess Tactics
 Winning Chess Tactics。初心者のタクティクスの第一冊として進められることが多い。各モチーフの説明が丁寧になされているし、難易度は低い。難点はタクティクスの問題集の割に文字が多く、読むのが面倒、そのくせ問題数が少ない。まずは解いて覚えたいという人にはオススメしない。確か300題程度。

-Chess Tactics for Students
 Chess Tactics for Students。アメリカのDan Heismanというコーチ一押しの本。考えるより慣れろタイプの本。 各チャプターの冒頭に軽くモチーフの説明の後、数十問の同モチーフを用いた問題がある。問題のレベルは簡単。個人的には初心者がモチーフを理解する上では、最善に近い本だと思う。しかし、手に入れるのが面倒(米国Amazon.「com」か直販サイトで購入する必要あり)。したがって、そこまでして手に入れる価値はなく、他の本で代替可といえる。430問程度。

-Chess Tactics for Champions
 Chess Tactics for Champions。有名な5334問のタクティクス本の著者の娘、スーザン・ポルガーの本。この本も各チャプターに軽くモチーフの説明と例題を載せた後に、同モチーフを用いた問題を数十題提示するというタイプ。難易度としては、chess.comのタクティクス問題の1300~1600程度か、前者2つより難易度は高い。この本も個人的にはオススメ。570問程度。

-Learn Chess Tactics
 Learn Chess Tactics。イギリスのGM John Nunnのタクティクス本。この本も同様に冒頭に各モチーフの説明+例題というスタイル。ただし、説明は上記ポルガー本よりも詳しい。難易度はポルガー本より若干難しい程度。オススメ。600題程度。

-1001 Chess Exercises for Beginners ★
 1001 Chess Exercises for Beginners。最近出版された本。もともとはイタリアで販売されていた本が翻訳されたもの。題名の通り1001問。もっとも、内容は「Beginners」と書いてあるが、問題のレベルは初級~中級程度と幅広い。 この本も冒頭に各モチーフの説明+例題、その後に問題というスタイル。説明は薄い。ただし、メイトの問題も多い。何より問題数が多いことが魅力。値段も安い。個人的には、何か一冊となった場合、値段・手に入れやすさを考慮すれば、現時点ではこの本がベストではないかと思う。

-Chess Tactics
Chess Tactics。 タクティクスのモチーフの分類が細かく、解説も丁寧、問題も簡単すぎず難しすぎず適度。一冊目としてオススメできる。ただ、絶版のため入手困難かも。中古で手に入ったらラッキー。ただし、あえて高い金を出して買う本ではない。

-Simple Chess Tactics
Simple Chess Tactics。 ここに挙げた中では最も簡単な本。かなり薄めのモチーフ解説の後、かなり簡単な問題が続く。他の問題集が難しすぎるという人にはオススメ。

-Power Chess For Kids
 Power Chess For Kids。 いかなる状況であっても強制手順は読むべきであるが、その重要性を説いている本。子供向けの本だが、強制手順を読むことの重要性が改めて理解できる。一応タクティクスのモチーフ解説もある。 上記いずれか一冊+αの本として初心者にオススメ。 ちなみに、この本のレベルアップ版でForcing Chess Movesというものがあり、相性がよいと思われる(但し、そちらはずっと難しい)。

イ メイト
-チェックメイトの技法(The Art of Checkmate)
 まずは、チェックメイトの技法。英語版は、The Art of Checkmate。有名なチェックメイトのパターンを詳しく説明かつ網羅している。ただし文字が無駄に多く読むのが面倒。

-Checkmate for Children
 次に、Checkmate for Children。 知名度はあまり高くないが個人的にはオススメの本。 メイトとなりうる駒の配列を一覧で冒頭に紹介、そしてそのパターンを用いた問題がそれに続く形。視覚的にメイトの形が覚えやすい。丸暗記しやすいと思う。オススメ。

 メイトの問題本はたくさんあるが、メイトパターンを重視して解説している本は上記二冊が良いのではないか。

(2)ソフトウェア・ウェブサイトによる場合
-Chess Tempo ★
 まずは、Chess Tempo。個人的には、このサイトの有料版があれば、他の本は不要なのではないかと思う。有料版登録すれば何ができるのかというと、タクティクスのモチーフ・難易度・手数・ユーザーによる評価・当該タクティクスの派生してきたオープニング・ユーザーによって解かれた回数・作成日時・自分が間違えた問題・駒の数…等々、非常に細かい設定をもって問題を絞り込むことができる。 例えば、「Sicilian Najdorfから出現するタクティクスで、駒の数は総数28個程度、1980~2012年のゲームからのタクティクス」なんていう指定も可能。

 しかも、上記で紹介したようにモチーフの分類が非常に細かい。 このサイトがあれば、各モチーフ毎の問題群、自分の問題集も作れる。例えば、ピンで50問、フォークで50問…、問題の難易度はRating1000-1200などと設定すれば良いだろう。それだけで自作の良質パターン特化問題集が作れる。

 料金は、ゴールド会員で月4$又は年間35$。タクティクス本を買いまくってお金を無駄にするよりこのサイト一本というのでも十分ではないかと思われる。
 
-Chess.comのChess Tactics Trainer
 ひたすらタクティクスを解くだけの場所。難点としては、問題の復習がやりにくい、モチーフ毎の分類ができない、その他Chess Tempoのような問題の分類ができない。ただ、Chess Tempoに比べレーティングが上がりやすく、上達が目に見えてわかりやすく、実力チェックには最適か。
 Chess Tactics Server等他にも似たようなサイトが複数あるが、似たりよったり。

-Chessimo
  Chessimo。ソフトウェア。なかなかおもしろいコンセプトのタクティクス・メイト・エンドゲーム・ストラテジー全ぶち込み問題集。 チェスで最も重要なのはパターン認識であるという理解を前提に、普通に解いて進めていくと全ての問題を7回、回せるように作られている。

 具体的には、問題がユニットにわかれているのだが、まずは今回の問題30題、次に前回の問題20題の復習、前々回の問題20題の復習…全部合わせて150題といった風に、復習が自動的に組み込まれている。 親切に、day1,2~と、毎日すべきプランまで立ててくれている。(一日分にしては多すぎる気もする量だが・・・)

 タクティクス・メイトのパターンについての説明はない。しかし、解いてみたらわかるが、モチーフが理解できるように超易→易→中→難とうまいこと問題の順番が作られており、自然にモチーフ・パターンを理解できるようになっている。

 ただし、量が非常に多く、「Tactics」編については、多くの人がチェックメイトの章で力尽きるのではないかと思われる。(タクティクス編は6チャプターほどあり、1つのチャプターにつき50ユニット、1つのユニットの中に80~250題程度。チェックメイトは第一チャプター。)。 問題数としては、タクティクスが4000問程度、ストラテジーが700問程度、エンドゲームが1400問程度というマンモス容量。 しかも、それが7回繰り返される。お腹いっぱい。

 何も考えずにプランを立ててくれるので、スパルタ教育が好きな人にはオススメ。

-ChessOKのソフトさまざま
 ChessOKという会社(旧名Convetka)があり、非常に多くのソフトウェアを販売している。特に、CT-ART 4.0というソフトがおそらく最も有名。 Michael De La Mazaという人物が、Rapid Chess Improvementといういかがわしい本の中で、「タクティクスばかりやればFIDEレーティング2000に到達できる、俺はCT-ARTを8回繰り返して、レーティング2000に行ったよ!」といういかがわしい主張を揚げ、真似をする人が続出したらしい(結果的にはほとんどの人が同じような成果を残せなかった)。

 話を戻すが、CT-ARTは1000問程度の問題集。タクティクスサイトのようにマウスで手を選ぶという方式。解く方法としては、第一問目からひたすら解くという方法もあれば、タクティクスのモチーフ毎に解くという方法もある。 問題の正誤数により自分の概算レーティングも算出してくれる(超がつくほどの適当算定だが…)。 難易度は高め。Chess.comのタクティクス問題の1700~2000以上ぐらいか。したがって、モチーフ・パターンの理解の初歩としては難しすぎるだろう。中級者以上の人がモチーフ・パターンの再確認としては有用なのではないか。

 CT-ART以外にもタクティクスのソフトが充実している。ただ、片手間で作った臭がするソフトも多く玉石混交。少なくとも、タクティクスのソフトに関して言えばCT-ART以外に特にめぼしいものはないだろう。(エンドゲーム、ストラテジーに関しては非常に評判が高いものもある。)

2013年6月11日火曜日

ドラゴン

妙に好調、また勝てた。ドラゴンは結構苦手なディフェンスだが、今回は相手のミスにも助けられて無難に勝てた。

2013年6月9日日曜日

良く頑張ったで賞



 昨日は不甲斐ないカスみたいなゲームをしてしまったが、今日はよくがんばったと思えるゲーム。 少しずつQueen's Gambit Declinedのゲームも慣れてきた。棋譜注釈は詳しめにつけた。

2013年6月8日土曜日

ボニファティウス8世


最近のゲームで最悪のゲーム。

ミスを避けようなんて偉そうに言っておいて、早速自分で愚かすぎる悪手、しかも、浮き駒に気づきませんでしたという悪手を打ったゲーム。

 25手目までは勝っていた。 格上相手に勝てると思いオラオラ攻めを敢行しようと意気込んでいたが、26手目に産業廃棄物手を打ってしまい死んだ。残り時間が1分ぐらいしかなかったということもあるが、それにしても、前回の記事で書いた通り、「打つ前に考える」という作業を2秒していたら回避できたはずだ。

 これだけでも憤死しかけなのだが、一番最後で完全に精神的憤死してしまった。 ビショップを取られたショックで脊髄反射的にリザインしてしまったのだが、実は最後の白の手は悪手だった。Qg5+からのハイパー簡単なタクティクスに気づかなかった。 

 ちなみに相手はインド人。前回のゲームではインド人に勝ったが、今度はインド人に埋葬されてしまった。チーン。

2013年6月5日水曜日

チェスが上手くなるには・・・2.ミスの回避

 前回の続き。ミスをいかに減らすか。 (ミスを減らすというテーマについては、以前のブログの記事で扱っている。どちらかといえば本で書かれているミス減少メソッドの紹介という形になっているが、興味のある人は参照してほしい。)

 Dan HeismanのA guide to Chess Improvementでは、手を選ぶ際、以下のような思考過程を経るべきとされる。

    相手の脅威の確認。特に、強制手順(forcing moves)の検討。
    相手のとりうるプランの確認。 自分のプランの確認。
    無条件にforcing movesは最初に全て検討。
    ③でタクティクス等がなければ、自分のプランを達成させる手を「全て」チェック。なければ、相手のプランを阻害する手を全てチェック。(Initial Candidate Moves)
    ④における手を、安全か(blunderに至らないか)どうかという観点から、剪定する。
    ⑤において残った手の中から、最終ポジションの比較によって最も優れているものを選ぶ。(Final Candidate Moves)

 この中の①がミス回避に相当する。ただ、相手の強制手順を検討するといっても、特に注意すべきところがあり、そこに注意すればより多くのミスが減らせると思う。 以下、詳しく述べる。

1.タダ取りの回避
 そもそも、駒がタダ取りされるというのはどういう場合が多いか。次のような場面が多いのではないだろうか。

 「相手の強制手で危険なものはない・・・手の検討に入ろう ・・・ ここでd5としたら、駒損するし・・・かといって、Nd5としてもe6で追い返される・・・(数分経過)。  わからん・・・いろいろ考えたけど、Qg4にしよう! ・・・ あ、やってもうた!!!・・・(相手のナイトの利きに気付かず、クイーンタダ取り)」

 今もこういうミスをよくしてしまう。散々他の手を考えた挙句、ほぼ無根拠にある手を選び、それが大悪手、場合によっては、タダ取りされてしまう。 一応最初に相手の強制手順の検討も行なっている。しかし、ミスをしてしまう。 理由は簡単だ。単に、自分がこれから打つ手の安全性を確認をしていないというだけだ。

 経験上、数あるブランダーの原因の中で最大のものは、これから打とうとする手の安全確認をしていないということにある。逆に言えば、これから打つ手の安全確認を入念に行えばミスは大幅におさえることができる。

 具体的には
①動かした駒が守られているか。
②動かした駒は別の駒の守りを外していないか(そして、結果、浮き駒が発生していないか)
③動かした駒が別の駒の利きを妨害していないか(そして、同上)
etc...

 つまり、自分がある駒を動かすことによって生じる盤面への影響、手の意味、を検討する。 ある手が頭に浮かんだとしても、実際に打つ前に、この思考を絶対に忘れないようにする、これだけでミスは劇的に減少するはずだ。 実際、打つ前のミスチェックを丁寧にするようにしたら、ミスは劇的に減った。 そして、この作業は慣れたら時間もかからない。

 整理すれば・・・

①手の選択
②手を打つ「前に」入念に、これから打とうとする手の「意味」(上述参照)をチェック。
③実際に打つ


2.タクティクスの回避

 浮き駒があるかどうかということは注意を持って盤面を見れば誰でも気付く。 しかし、タクティクスの場合だとそうはいかない。しかし、ここでいうタクティクスは複雑なタクティクスではなく、1~3手程度の簡単なタクティクス。

 まず、相手のタクティクスを回避するためには、最低限のタクティクスのパターン(フォーク、ピン、ディカバードアタック、等々)を知っておかなければならない。特にメイトは完全にパターンなので必ず覚える必要がある。 (タクティクスのパターンについては、個人的には、Chess Tempoの有料版がオススメ。かなり細かくタクティクスのモチーフ毎に分類されており、難易度に応じて自作の問題が作成可。)

 パターンを覚えたとして、相手のタクティクスに気付くにはどうすれば良いか。タクティクスの「問題」ならいざしらず、実戦でタクティクスに気付くのは案外難しい。

 この点については、そもそもタクティクスはどのような場合に発生するのかというタクティクスの発生条件に注意すれば良いと思われる。 これについては、 Tune Your Chess Tactics Antennaが詳しい(むしろタクティクスの発生条件に詳しく述べた本はこの本と、Understanding Chess Tacticsぐらいか)。 この本曰く、タクティクスが発生しやすい条件というのは

①キングのポジションが危険であること
特に、キング周りが開きすぎ/閉じすぎ、の場合はメイトが発生、あるいは、メイトスレットを応用したタクティクスが発生しやすい。

②守られていない駒があること
→通常、ダブルアタック等のタクティクスは浮き駒があることが発生条件。特に複数個ある場合は要注意。

③同一直線上の駒の配置に危険性があること
→例えば、キングとクイーンが同一直線上にある等、危険なラインが存在しないか。 ピン、スキュアー、ディスカバードアタック等が発生する可能性。

④ナイトがフォークをできる位置にいること
→ナイトが数手先でフォークすることがないか。ナイトは動きが変則的であるから、その進路の検討。

⑤極端に窮屈な配置の駒が存在すること
→トラップされる可能性。

⑥重要なディフェンスの役割を負っている駒の存在/負担過剰の駒の存在
→例えば、メイトを防ぐ守り駒が1つしかない状況等では、その駒が決定的に重要となってしまいタクティクスが発生しやすい。また、1駒で2個以上の防御の役割を果たしている駒が存在する場合もタクティクスが発生しやすい。

⑦守る駒が少ないこと・守る駒が遠すぎること
メイトのスレットがあるのに、キング周りに駒が少ないとメイトされてしまう危険性がある。また、駒が盤面の一方に偏っている場合も、もう一方のディフェンスが疎かになりタクティクスが発生しやすくなる。

上記7つはいずれも、タクティクスが発生する蓋然性が高い条件であり、これらの条件がそろうからといってタクティクスが発生するとは限らない。しかし、①~⑦のような観察をすることができるようになれば、タクティクスが発生するかどうかの見極めが容易になる。(もちろん、これは、自分がタクティクスを決めようとする場合も同様)。

3.まとめ
 非常に長くなった。 ここで書いたミス回避の思考過程をまとめるとすると・・・

①手を考慮する「前」の盤面の確認。
→タダ取りされる駒の有無の検討。タクティクスの発生条件の有無の検討。
②手の選択
③打つ「前」に、②で選択した手によって浮き駒が発生しないか、タクティクスが発生しないかを検討。
④実際に打つ。

①③いずれの作業も慣れれば時間はかからない。特に、③が忘れがちだが、重要。

残り1分からが勝負

 
  序盤12手目でいきなり愚かな悪手を打ってしまったが逆転できたゲーム。 25手目ぐらいからお互いの持ち時間が一分ぐらいになった。 いつも序盤~中盤で時間を使いすぎてしまうので、途中でリザインしない限り、たいてい終わりには時間がなくなる。 しかし、相手も時間がない場合、条件は同じ。 後はどちらが先にミスをするかという展開になる。これがなかなかスリル感があって面白い。今回は、焦ったインド人が自爆して死亡してしまった。合掌。

2013年6月4日火曜日

おいしそうな毒キノコ・・・



 よくやってしまうミスの1つに、いかにもとってくださいといわんばかりのポーンに突撃して、結果的に玉砕するというものがある。ちょうどそんなミスをしたので紹介。

 オープニングはSicilian Kan。典型的な手と形を知っていれば手の順序は柔軟に変えられること(したがって、手順を暗記する必要性が低い)、相手が...d6のシシリアンに比べて相手が指し慣れていないこと、かといって奇抜なだけで相手が対策を知っていれば脆い類のオープニングではないこと、単純に指しやすいと感じること、こういった理由から1.e4に対する黒番ではほとんどこのオープニングを選択している。 勝率もそれほど悪くない。

 このゲームのターニングポイントは19手目。相手が、19.f5としたところから。ゲームでは、何も考えずに、「ポーンいただき!」てなもので19...exf5としてしまった。しかし、このポーンは食べてはいけない毒キノコ(ポーンを裏返せばキノコっぽいから)で、その後は急激に容態悪化し、帰らぬ人となってしまった。チーン。

 もちろん、19...exf5とした理由は単純明快で、この時点でも1ポーンアップしているから、もう一個ポーンをというもの。 ゲームの注釈にも書いたが、この手によって、c3にいるナイトが展開し、続いて連続で、ナイト、クイーン、ルークと急激な展開を許してしまった。

 展開の早さvs駒得という状況はまだまだ苦手。 毎回毎回、これとって良いのか、これとって相手のアタックが増長されないかと時間を消費し、結果的に間違える。今回も判断を誤って死んでしまった。 


2013年6月1日土曜日

チェスが上手くなるには・・・1.初中級者と上級者の最大の差

 1年間ブログを書いていなかったので、いくらか書きたいことが溜まっている。

 まずは、上達するためにはどうすればいいかというテーマ。自分よりも遥かに上手いプレイヤーがブログを書いている中で、こういうテーマについて書いたとしても需要があるかはわからない。 しかし、初級者から中級者あたりの上達についてまとまった形で述べたものが少ないため、特に初級者の人には参考になる「かも」しれない。 もっとも、私自身ネットでしかチェスの経験もなく、大して強くもないポンコツプレイヤーなので話半分で読んでもらいたい。

チェスが上手くなるには・・・1.初中級者と上級者の最大の差

 chess.comのStandard15m10sのゲームで、レーティング1450ぐらいから負けたゲームについては見直しと一言メモのようなものを残すようにしていた。 一般的に、自分のゲームの見直しが一番勉強になると言われているのでそれに従った結果なのだが、それなりに収穫はあった。

 結果的に50試合程度の見直しとメモを残した(最近は面倒なのでしていない)。実際にやってみると、自分のゲームの見直しというのは、ミスを抽出して自分の陥りやすいミスを一般化し、それを修正する作業なのだとわかる。というのも、残したメモを見ると多くが重複しており、それが何度も繰り返されているからだ。実際、それらの類型的なミスを修正しようと意識するとレーティングは一気に上がった。

 ミスで最も多かったのは、駒損の「見落とし」だった。 上級者と初中級者の最大の違いは、タクティクスの読みの深さでも、ストラテジーの知識の豊かさでも、エンドゲームの知識でも、ましてやオープニングの知識でもないということに改めて気づいた。単純に初中級者は見落としミスが多くそれゆえに負ける。SoltisのWhat It Takes to become a chess master(チェスマスターになるためには何が必要か) に、レーティング1900に達するためにはブランダーをしなくなることにより達成できると書かれているが、まんざら嘘ではないのだろう。

 そう考えると、やはり、初中級者が上手くなろうとしたら、ミスを減らす努力をすることが最も効果的ということになる。 (なお、ここでいう初・中・上級者という言葉は、大体、chess.com Standardで、~1300、1300~1900、1900~ぐらいのイメージで使っている。)

 ミスといっても様々な種類がある。相手の8手のコンビネーションが読めなかったからクイーンを落としたというものもあれば、1手のナイト・フォークに気づかなかったというものもある。単に駒が浮いて(en prise)いることを気づかず「タダ取り」されてしまうこともある。 あるいは、駒損をしなくとも、キング周りのポーンの形が壊される手を打ってしまったというようなものもある。

 もっとも、初中級者の段階で一番重要なのは、これらのミスの中でも、「タダ取り」、「一手のタクティクス」を決められないことだ。 あまりにもレベルが低い話のようだが、少なくともレーティング1700ぐらいまでこれは変わらない(ここでの「レーティング」はchess.com Standardのこと)。 おそらく1800でも変わらないのではないかと思う。レーティングが1200~1400ぐらいのときには、1600以上になったら、そういうレベルの低い話から解放されるのだと思っていたが、そんなことはなかった。 若干インフレ気味だが、現在chess.comのレーティングが1700あたりをさまよっているが、ほとんどのゲームの勝敗がそういうしょうもないミスで決まる。

 本で得られるような知識をいくら詰め込めもうとも、こういったミスを減らすことができなかったら上達できない。いくらバッドビショップが…とか、ポーンストラクチャーが…なんて考えたところで、タダ取り・一手のタクティクスが決められまくっているようでは、まさに下手の考え休むに似たりとなってしまう。

 では、具体的にどうすればミスを減らせるのか。これについては次回以降の記事で扱いたい。

2013年5月30日木曜日

変なオープニング1 : St. George Defence

今までに知った変なオープニングの紹介をしていきたい。

第一回 :  St.George Defence (1.e4 a6?!)


 いかにも悪手。センター支配とは何の関係性もなさそうであり、駒の展開に資することもない。 ただ、...a6という手は、多くのオープニングで用いられるため他のオープニングに移行しやすい。例えば、シシリアンだったらほとんどのバリエーションで...a6を含むバリエーションがある。また、Modern Defenceにも1...a6のバリエーションがある。したがって、1...a6から始めてもそれらのオープニングに移行(transposition)することはできる(分岐参照)。

 ただ、今回扱うのは2...b5からのメインライン(?)。

 Bulletで何回か使ったことがあるが、感触としてはそれほど悪くない。フィアンケットしたビショップでe4にプレッシャーをかける。b5のおかげで白はNc3ではe4を守り難い(...b4とくるため)。 また、...e6とすることにより、キングサイドビショップの展開が図れる。しかし、マイナス点としては、展開があまりにも遅すぎるということだろう。ビショップをフィアンケットするためだけに、3手も使っているのは致命的。 しかし、このオープニングのラインを白番でおさえている人はほぼ皆無ということは大きな利点かもしれない。

 実際、上記局面は、2...b5から始まるゲームで最も指された回数が高いラインを示しているのだが、9手目で白がいきなりブランダーをしている。 これは、やはり白は白で混乱してしまっているということだろう。 ということで、奇抜なオープニングで相手を驚かせたいというのなら、なかなか面白いオープニングかもしれない。

 もっとも、このオープニングが単なる変なオープニングで終わらず、それなりに知られるようになったのはかつてのチャンピオン、アナトリー・カルポフが白番で負けてしまったことにあるようだ。


負けた後は憤死レベルで悔しかっただろう。この棋譜の詳しい解説はここを参照。
カルポフを倒したオープニングということで試してみたい人は是非。

2013年5月29日水曜日

一新 再開

ブログを書かなくなってからちょうど1年ぐらいですが、前みたいにバリバリやらずとも少しずつ更新していきたいと思います。

最近のゲームから失敗したものとよくできたもの。

まずはよくできた方から。




6手目でいきなり悪手を打ってしまうが、タクティクスが決まって大逆転。

6手目…...c6という手を打つということ自体はわかっていたが、順番を勘違い。意図としては、Bd3が来る前に、Bf4を打とうというものだったが、Qb3に気づいていなかった。

8手目…b7, d5の両方を守れないことは明らかなので、展開することにした。

10手目…Qxb2に対応しなければならないとも考えたが、Qxb2とした場合、...Rb8とRxb2で相手のセカンドランクに侵入することができる。したがって、展開を優先した。コンピューターは、11...c5という手を最善手としている。この手順で行くと、黒がポーン3つ差であるが圧倒的にinitiativeを握ることができるため、黒有利となるようだ。 ただ、その展開の優位を勝ちにまで結びつけることはできなかったとは思う。


16手目…相手の痛恨のミス。 fファイルが危ないことになっていることを考えれば、Nf3とすべきだった。

次は失敗ゲーム。 相手は初めてのタイトルホルダー(NM)。